第7章 結末編
文字数 1,253文字
事務所のラジオから引っ切り無しに流れてくるニュースを聞き流しながら探偵は新聞を読んでいた。
「つまんない…あーつまんねぇ!」探偵は新聞をくしゃくしゃにして投げ捨てた。
「先生、いい大人がかんしゃくを起こさないで下さい。みっともない」助手はキッチンで作業をしながら答えた。
「何でうちにはテレビが無いんだ!『真相!闇市探求』をうちで見たいのに!」
「仕方ないじゃないですか、懸賞が当たらなかったんですから。諦めて自分のお金で買って下さいよ」
「ふざけるな、あんな高いの買えるわけないだろ」探偵は上半身を机に倒れ混んだ。
「あー無理、やる気出ない。暫くやる気なんて出ないぞ」完全な無気力におちいった。
「そんなこと言わないでこれでも飲んで落ち着いて下さい」助手は探偵の机に珈琲の入ったカップを置いた。
「いっそやけだ、マレーからありったけ金ふんだくってやる」そう言いカップを手に取った。
「だけどなーあいつ今それ所じゃねぇし暫く会えねえだろうな…」さっきから助手の目線が気になる。
「ずっと見てるが何か用か。給料なら今月はパーだ、来月までまちな」
「給料の事なら全然大丈夫…じゃないですけどものすごく大事ですけど、それはさておき今日の珈琲はどうですか?」助手が尋ねてきた。
机に置かれたカップを手に取り一口飲んだ。
「ああ、丁度人肌だ。飲める」探偵は淡々と言った。
「いやそうじゃなくて、味とかどうです?香りとか?」
そう言われて探偵は少しカップに入った珈琲を目を細めて見て数秒だった。
「喫茶店で飲む方がましだな」
「そんなー」助手はソファーに寝転んだ。
「ちゃんと教えてもらって練習もしたのに」
「へえ、あの堅物マスターに教えてもらったんかい」
「いいえ、新しい友達に教えてもらったんです」笑顔で答えた。
「またお前の誰とも友達になれる技術ってやつか。友達を作るのは悪くないが変な奴とか悪い奴と友達になるんじゃねぇぞ。お前もいい歳なんだからそこら辺しっかりと…」探偵は頭を抱えた。
「大丈夫です、私の友達に悪い人はいませんから」助手はきっぱりと言った。
お友達になって下さい
えっ
もっと海外の事を知りたいんです、私
それは…
それに珈琲も、先生よく飲むから美味しいの淹れたくて
「次、いつ来てくれるかな」助手は鼻歌を歌った。
探偵はラジオの放送を聞きながらもう一度カップを取った。
(まあ、前よりましになったな)
珈琲を一気に流し込んだ。
「あー、不味い」
第7章
亡霊の匂い
完