第7章 結末編

文字数 1,253文字

次のニュースです。昨夜、クラリス・バーレイ魔法魔術大臣が亡くなられました。バーレイ大臣は自宅で倒れているのを発見され直ぐに病院に運ばれましたが既に死亡が確認されました。死因は病死と見られ近日中に葬儀が行われる予定で、後任者を選別するとの事です。続いてのニュースです。怪盗黒雨がまた予告状を出したとして…


事務所のラジオから引っ切り無しに流れてくるニュースを聞き流しながら探偵は新聞を読んでいた。
「つまんない…あーつまんねぇ!」探偵は新聞をくしゃくしゃにして投げ捨てた。
「先生、いい大人がかんしゃくを起こさないで下さい。みっともない」助手はキッチンで作業をしながら答えた。
「何でうちにはテレビが無いんだ!『真相!闇市探求』をうちで見たいのに!」
「仕方ないじゃないですか、懸賞が当たらなかったんですから。諦めて自分のお金で買って下さいよ」
「ふざけるな、あんな高いの買えるわけないだろ」探偵は上半身を机に倒れ混んだ。
「あー無理、やる気出ない。暫くやる気なんて出ないぞ」完全な無気力におちいった。
「そんなこと言わないでこれでも飲んで落ち着いて下さい」助手は探偵の机に珈琲の入ったカップを置いた。
「いっそやけだ、マレーからありったけ金ふんだくってやる」そう言いカップを手に取った。
「だけどなーあいつ今それ所じゃねぇし暫く会えねえだろうな…」さっきから助手の目線が気になる。
「ずっと見てるが何か用か。給料なら今月はパーだ、来月までまちな」
「給料の事なら全然大丈夫…じゃないですけどものすごく大事ですけど、それはさておき今日の珈琲はどうですか?」助手が尋ねてきた。
机に置かれたカップを手に取り一口飲んだ。
「ああ、丁度人肌だ。飲める」探偵は淡々と言った。
「いやそうじゃなくて、味とかどうです?香りとか?」
そう言われて探偵は少しカップに入った珈琲を目を細めて見て数秒だった。
「喫茶店で飲む方がましだな」
「そんなー」助手はソファーに寝転んだ。
「ちゃんと教えてもらって練習もしたのに」
「へえ、あの堅物マスターに教えてもらったんかい」
「いいえ、新しい友達に教えてもらったんです」笑顔で答えた。
「またお前の誰とも友達になれる技術ってやつか。友達を作るのは悪くないが変な奴とか悪い奴と友達になるんじゃねぇぞ。お前もいい歳なんだからそこら辺しっかりと…」探偵は頭を抱えた。
「大丈夫です、私の友達に悪い人はいませんから」助手はきっぱりと言った。


お友達になって下さい

えっ

もっと海外の事を知りたいんです、私

それは…

それに珈琲も、先生よく飲むから美味しいの淹れたくて


「次、いつ来てくれるかな」助手は鼻歌を歌った。
探偵はラジオの放送を聞きながらもう一度カップを取った。
(まあ、前よりましになったな)
珈琲を一気に流し込んだ。
「あー、不味い」





               第7章
             亡霊の匂い
                 完
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み