第3話

文字数 543文字

読み終え窓を見ると既に夕陽が差し込んでいた。本の表紙をそっと手を置き、余韻に浸った。
素晴らしかった…この言葉しか今は出てこない。もっと表現する言葉があるはずなのに今は何も出てこない。本当に凄かった…本当…凄い。

主人公がいいの!感情をあまり表に出さず冷静に物事を観察して事件を解決し、被害者や犯人の心情を読み取り接する姿、そして最愛の助手とのロマンス…嗚呼、良い。
私もあんな先生の元に付きたい!

それに比べたらうちの先生ときたら仕事が無いからってずっと寝てるし、起きたと思ったら変なもの買ってるわ、出掛けたら帰ってこないわ、挙げ句の果てには私の給料まで博打に使うわ、人としてどうかしてるんじゃないかと疑いたくなる。

それはそうとあんなカッコいい素敵な方が書いてるなんて思わなかったな、普段どんな生活をしてるんだろう。
お洒落な書斎でお茶でも飲みながら書いているのかな、書斎の窓から海辺の景色とか見ながら(つづ)っているのかな、タイプライター?いや筆で書いているかもしれない。

突如、外から鐘の音が響き、ふと我に戻った。
部屋の時計を確認したら六時を知らせる音であった。
「いけない、お夕飯の支度しないと」
助手は慌てて席を立ち、探偵が投げつけた紙くずを拾い部屋を出た。
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登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

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