第3話
文字数 712文字
黒い布の上に濃く青く子供の手程の大きさの宝石だった。近づくとさらに輝きが増していた。
もっと近づいて見た。
近くで見ると青だけでなくカットされた断面から紫や赤色が見え、中心が蝋燭の明かりの様に揺らめいていた。
「綺麗…」
吸い込まれる
もっと…もっと…もっと…近くで…
見たい…触れたい…この手で…
ゆっくりと手を伸ばしあと一歩
突然腕を捕まれた。
「触るな」
先生が私の腕を引っ張った。
「こいつに触るな、呑まれるぞ」
先生が力強く腕を引っ張った。
「馬鹿野郎!勝手に離れるなと言ったろ」
「先生…私どうして…」
記録が曖昧だ、あの光を見たのを覚えているがそこからの記録が覚えていない。
「これはユベールの旦那、顔を出すのは久しぶりですな」
店主だと思われる男が現れた。
「お連れがいるとは珍しい、旦那の彼女ですかい?お若いですな。どうですお嬢さんお気に召しましたか?」
「何がお気に召したかだ!こんな危ない物店先に置いておくんじゃねぇよ!それと彼女じゃねぇよ!うちの助手だ!」
「先生、あれは何ですか?」
「あれはな…おい、早くそいつを箱にしまえ」
「すまない旦那、今こいつを取り扱える奴が今朝から行方知らずで」
「朝から放ったらかしかよ…仕方ねぇ、この借りは高いからな箱持ってこい」
店主が店の奥から硝子のついた箱を持ってきた。
先生は自分の左腹部をコートの上から三回軽く叩いた。
「行くぞ、こっちを見るなよ」
数十秒後
「いいぞ終わった」
宝石は箱の中に入れられ蓋についている硝子越しに見えた。先ほどより輝きが鈍くなった気がする。
「ったく、こんな物店先に置いて置くなよ」
「すまないね旦那」店主はニヤニヤと笑っていた。
「先生あの…」
「あーあれはな
心石
だ」