第4話

文字数 894文字

雷の轟音鳴り響く中、扉を蹴破り我が物顔でディエゴが入ってきた。
この家に見たときと同じローブを着ているが鮮血で染まっていてまだ血が滴っている。

「わりぃな、遊んでたら遅れちまった」
そう言い扉の前の席に片脚を立てて座った。

いつの間にか使用人の姿が消えてここには自分と助手を含めて六人となった。

「さあ、さっさと始めようぜ」

「会議の前に食事を済ませましょう」
ウィレムが言い出した。

目の前のテーブルには平たい皿に赤色のスープが置かれている。

「では頂きましょう」

ウィレムが言うとマレリアが笑顔でスプーンを手に取り飲み始めた。
ディエゴは平皿ごと手に取り溢しながら飲み干した。

隣の助手は待てと言われて我慢の寸前まできている犬の様に溢れるよだれを堪えていた。

「先生、頂いてもいいんですよね、ね!」

「いいのよ、いっぱい食べてねチャシャさん。おかわりあるから」
マレリアが微笑みながら言った。

「はい、頂きます!」

助手が急ぎスプーンを手に取りスプーンをすくい口に含んだ。

「うゎあ、とっても美味し…」

言い出した途中で助手の頭がスープの皿に沈んだ。

身体に力なくテーブルに倒れ込んで意識を失ってた。

昏睡効果の毒を使ったのだろう、死ぬ事はないがほっとくとスープで窒息するな。

だかそんな事はどうでもいい。目を逸らしてはいけないのはあの女だ。

この部屋に入ってから微動だにしない、目を離してはいけない、それだけは自分の勘がそう言っている。

だがそれが仇になったのだろう、敵の手中にはまってしまった。
左手に力が入らない。目に見えない程の細い針、椅子の手すりに毒針が仕込んであったんだろう。ウィレムの仕業だ。
先程いたマレリアが席にいない、テーブルの下を潜ってこちらに来ている。
そこに痺れを切らしたディエゴがテーブルに脚をかけて持ってきた槍を構えている。

全くもって最悪だ。

左手が動かない
助手が食われる寸前
横槍が飛んでくる

そしてこの狂喜の中、全く動かない家の親ときたら…

家族(こいつら)は会議などもうどうでも良かったのだ。

血を浴びたい
肉を喰らいたい
骨が砕ける音が聴きたい

己の欲望の為に俺達を呼んだのだ。イカれた奴らだ。

参ったよ、本当に

本当に…

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登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

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