このタイミングで楽屋トークpart2(お題:稲荷ちがい)

文字数 1,660文字

☆楽屋にて

ベンジャミン「あ、ミラ姐さんお疲れー」
ミランダ「ううん、まだ1シーン残ってるよ。みんなスタンバイOK?」
フロリアン「(小声で)しっ」
ミランダ「(小声で)何?」
クリストフ(アリアを指さす)

アリア、楽屋のモニターで文楽『義経千本桜』二段目の「伏見稲荷の段」を観ている。

アリア(イライライライラ)
一同(やばい)

アリ「ちょっとひどくないこれ?! (あたし)こんなじゃないから!!(怒)」
一同(ああやっぱり)

アリ「なにこの静御前(おんな)。重すぎ。義経が足手まといだって言ってるのに泣きながらついてくってうざすぎ」
ベン「いや、これ、昔のお話だから……」
アリ「だいたいこんな真っ赤な派手な着物着てキラキラのかんざし挿してついてったら目立ちまくり。ほんと邪魔くさい(ぷんぷん)」
ミラ「まあそうだな」
アリ「可愛いけど(ぷんぷん)」
ミラ「まあそうだな」
ベン「同調しないで姐さん。火に油だよ」

アリ「原作(義経千本桜)だと縛られるの静なのね?」
ミラ「そ」
アリ「男どももひどくない? 静がついてこないように、鼓の緒をほどいて桜の木に縛りましたって何のプレイ」
ベン「おれじゃないよ。別の家来」
アリ「でも弁慶見て見ぬふりしてる」
ベン(うなだれる)
フロ「(アリアの視線を感じて)ごめん、おれ原作だとこのときもう死んでる(クランクアップ)
アリ「だからいなかったんだ」
フロ「うん」
クリス「(アリアの視線を感じて)おれ……」←四郎は超かっこよく出てきて助けてくれる役
アリ「助けに来るの遅ーい!!(怒)」
クリス「すんませんっ」

アリ「こんな縛られて置き去りにされてえんえん泣いてたら男に襲ってくれって言ってるようなもんじゃない。それで暴漢出てくるってお約束すぎ(怒)」

アリ「だいたいさ、なんでヒロインってかならず暴漢に襲われなきゃなの? それマスト?」
ミラ「颯爽と現れて暴漢をけちらすイケメン!っていう見せ場を作るためでしょ。だから男もぎりぎりまで駆けつけて来ないんだよ。イケメンと暴漢、セット販売」
アリ「ヒロインとしてはイケメン単品でお願いしたいです。暴漢ぬきで(怒)」

ミラ「でもあれやってよ、あれ」
アリ「あれ?」
ベン「何?」
ミラ「この子あれ上手いの、ラピュタの物真似」
ベン&フロ&クリス「やってやって」
アリ「えー?」←まんざらでもない
ベン&フロ&クリス「やってやってやって」
アリ「『パズゥー! 来ちゃだめぇー!』」
ベン&フロ&クリス&ミラ「似てる似てる似てる似てる(笑)」

アリ「作者(この小説の)もひどくない? 伏見稲荷だったのね、ほんとは。それ佐助稲荷で、近場ですますってどうなの」
ベン「伏見稲荷は鳥居千本だからねー。セット組む時間なかったんじゃないの。全国のお稲荷さんの総本山だって?」
アリ「へえー」
フロ「あのね、言っていい?」
ミラ「何」
フロ「おれずっとお稲荷さまってきつねなのかと思ってた」
クリス「おれも」
ベン「違うよ。稲荷明神は普通に明神だよ。神だよ。おまえらきつねは眷属(パシリ)なだけじゃん」
フロ「だよな(納得)」

フロ「でもこの段の舞台が伏見稲荷である必要ってあるの?」

ベン「根本的な質問出たけど、答えはイエス。稲荷の境内だから狐忠信(きつねただのぶ)が出現するの。
静ちゃん縛れる木があったらどこの道端でもいいってわけじゃないの」
一同「あー(納得)」

フロ「でも、この小説の舞台が佐助稲荷である必要ってあったの?」
一同「……」

アリ「あれだよ、ぜったい、きつねちゃん印パンケーキ」(「お熱いのがお好き(9)」および「佐助稲荷とは」参照)
ベン&フロ&クリス「あー!(納得)」
ミラ「(一人だけ冷静)あれはカフェ」

クリス「あの」
一同「何?」
クリス「(おずおずと)そもそも、おれが主人公である必要って……」
ベン「だめだ四郎! それは訊いちゃいけない質問だ!」
(一同、口々になぐさめる)

バルタザール「(ひょいと顔を出し)みんなお疲れ。あと1テイク頑張ってねー」
一同「はーい」
ミラ「バル兄もう上がり?」
バル「わからん。いちおう待ち。ちょっとタバコ吸ってくるわ」
一同(未成年ちゃうんか)

一同(てか、出家ちゃうんか)
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登場人物紹介

波多野静/アリア(はたのしずか/ありあ)


この物語のヒロイン。明るく素直で天然。特技は歌とダンスと水泳。惚れっぽいのが玉にキズ。海霊族(ネレイド)。

波多野遥/ミランダ(はたのはるか/みらんだ)


アリアの姉。妹思いでクールかつ熱血。特技はアリアと同じく歌とダンスと水泳。アリアとよく似た容貌だが、5センチ背が高い。海霊族(ネレイド)。

水原九郎義経/クロード(みずはらくろうよしつね/くろーど)


アリアの同級生。小柄だが学年一の美貌で、すでに女子の半数は陥落させている(推定)。身体能力、とくに跳躍力に優れ、お気楽な言動で周囲をふりまわす。ベンジャミンたちから「御曹司」と呼ばれている。樹霊族(ドリュアード)。

武蔵弁慶/ベンジャミン(むさしべんけい/べんじゃみん)


アリアの同級生。筋骨たくましい大男だが、冷徹な知性派でもあり、クロードの暴走をつねに(かろうじて)食い止めている。人馬族(ケンタウロス)。

佐藤四郎忠信/クリストフ(さとうしろうただのぶ/くりすとふ)


アリアの同学年生(クラスは違う)。長身で俊足だが、内気で目立つのが苦手。極端な無口。女子に対する耐性ゼロ。水狐(ウォーターフォックス)。

佐藤三郎嗣信/フロリアン(さとうさぶろうつぐのぶ/ふろりあん)


クリストフの兄。容貌・性格・身体能力ともにクリストフとよく似ている。ただし左肩から右脇腹にかけて貫通創あり(一度死亡)。火狐(ファイアーフォックス)。

平野知盛/ヴァレンティン(ひらのとももり/ばれんてぃん)


平野一族の若き当主。物腰柔らか、文武両道の公達(きんだち)。現在はアリア姉妹の実家に客人として身を寄せる。クロードとは因縁の仲。樹霊族(ドリュアード)。

水原由良頼朝/カミーユ(みずはらゆらよりとも/かみーゆ)


クロードの異母姉。アリアやクロードたちとは別の全寮制高校に学ぶ。男装して生活している。頭脳明晰、真面目で誠実だが、男心も女心もまったく解さないのが玉にキズ。樹霊族(ドリュアード)。

北条政人/オーギュスト(ほうじょうまさと/おーぎゅすと)


カミーユの同級生。寮では隣室。そつのない完璧な優等生。影となり日陰となり(?)カミーユを支えるが、いまだに友達以上恋人未満の生殺しポジションに置かれている。水霊族(ナイアード)。

梶原源太景季/エドガー(かじわらげんたかげすえ/えどがー)


カミーユの同級生。佐々木エドマンドと血縁者ではない。橇犬族(ハスキー)。

佐々木四郎高綱/エドマンド(ささきしろうたかつな/えどまんど)


カミーユの同級生。梶原エドガーと血縁者ではない。橇犬族(ハスキー)。

遠藤盛遠/文覚/バルタザール(えんどうもりとお/もんがく/ばるたざーる)


カミーユとは中学時代からの先輩後輩の仲。アリアとミランダとは江ノ電の中で知り合う。荒海を一喝して静める法力の持ち主。性格は豪快で、人情に厚い。水霊族(ナイアード)。

土佐昌俊/ジョバンニ(とさしょうしゅん/じょばんに)


ベンジャミンのかつての修行仲間。その後カミーユに仕えていたはずだったが……。土霊族(ノーム)。

後白河雅仁/ローレンス(ごしらかわまさひと/ろーれんす)


法皇。この国の権力構造の最高位にありながら、一見ひょうひょうとした異端児の風貌を持つ。が、その本心は未知数。バルタザールとは那智の滝での修行仲間。龍族(ドラゴン)。

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