このタイミングで楽屋トークpart2(お題:稲荷ちがい)
文字数 1,660文字
ベンジャミン「あ、ミラ姐さんお疲れー」
ミランダ「ううん、まだ1シーン残ってるよ。みんなスタンバイOK?」
フロリアン「(小声で)しっ」
ミランダ「(小声で)何?」
クリストフ(アリアを指さす)
アリア、楽屋のモニターで文楽『義経千本桜』二段目の「伏見稲荷の段」を観ている。
アリア(イライライライラ)
一同(やばい)
アリ「ちょっとひどくないこれ?!
一同(ああやっぱり)
アリ「なにこの
ベン「いや、これ、昔のお話だから……」
アリ「だいたいこんな真っ赤な派手な着物着てキラキラのかんざし挿してついてったら目立ちまくり。ほんと邪魔くさい(ぷんぷん)」
ミラ「まあそうだな」
アリ「可愛いけど(ぷんぷん)」
ミラ「まあそうだな」
ベン「同調しないで姐さん。火に油だよ」
アリ「原作(義経千本桜)だと縛られるの静なのね?」
ミラ「そ」
アリ「男どももひどくない? 静がついてこないように、鼓の緒をほどいて桜の木に縛りましたって何のプレイ」
ベン「おれじゃないよ。別の家来」
アリ「でも弁慶見て見ぬふりしてる」
ベン(うなだれる)
フロ「(アリアの視線を感じて)ごめん、おれ原作だとこのときもう
アリ「だからいなかったんだ」
フロ「うん」
クリス「(アリアの視線を感じて)おれ……」←四郎は超かっこよく出てきて助けてくれる役
アリ「助けに来るの遅ーい!!(怒)」
クリス「すんませんっ」
アリ「こんな縛られて置き去りにされてえんえん泣いてたら男に襲ってくれって言ってるようなもんじゃない。それで暴漢出てくるってお約束すぎ(怒)」
アリ「だいたいさ、なんでヒロインってかならず暴漢に襲われなきゃなの? それマスト?」
ミラ「颯爽と現れて暴漢をけちらすイケメン!っていう見せ場を作るためでしょ。だから男もぎりぎりまで駆けつけて来ないんだよ。イケメンと暴漢、セット販売」
アリ「ヒロインとしてはイケメン単品でお願いしたいです。暴漢ぬきで(怒)」
ミラ「でもあれやってよ、あれ」
アリ「あれ?」
ベン「何?」
ミラ「この子あれ上手いの、ラピュタの物真似」
ベン&フロ&クリス「やってやって」
アリ「えー?」←まんざらでもない
ベン&フロ&クリス「やってやってやって」
アリ「『パズゥー! 来ちゃだめぇー!』」
ベン&フロ&クリス&ミラ「似てる似てる似てる似てる(笑)」
アリ「作者(この小説の)もひどくない? 伏見稲荷だったのね、ほんとは。それ佐助稲荷で、近場ですますってどうなの」
ベン「伏見稲荷は鳥居千本だからねー。セット組む時間なかったんじゃないの。全国のお稲荷さんの総本山だって?」
アリ「へえー」
フロ「あのね、言っていい?」
ミラ「何」
フロ「おれずっとお稲荷さまってきつねなのかと思ってた」
クリス「おれも」
ベン「違うよ。稲荷明神は普通に明神だよ。神だよ。おまえらきつねは
フロ「だよな(納得)」
フロ「でもこの段の舞台が伏見稲荷である必要ってあるの?」
ベン「根本的な質問出たけど、答えはイエス。稲荷の境内だから
静ちゃん縛れる木があったらどこの道端でもいいってわけじゃないの」
一同「あー(納得)」
フロ「でも、この小説の舞台が佐助稲荷である必要ってあったの?」
一同「……」
アリ「あれだよ、ぜったい、きつねちゃん印パンケーキ」(「お熱いのがお好き(9)」および「佐助稲荷とは」参照)
ベン&フロ&クリス「あー!(納得)」
ミラ「(一人だけ冷静)あれはカフェ」
クリス「あの」
一同「何?」
クリス「(おずおずと)そもそも、おれが主人公である必要って……」
ベン「だめだ四郎! それは訊いちゃいけない質問だ!」
(一同、口々になぐさめる)
バルタザール「(ひょいと顔を出し)みんなお疲れ。あと1テイク頑張ってねー」
一同「はーい」
ミラ「バル兄もう上がり?」
バル「わからん。いちおう待ち。ちょっとタバコ吸ってくるわ」
一同(未成年ちゃうんか)
一同(てか、出家ちゃうんか)