ロッカバイ・ベイビー (7)
文字数 703文字
〈おまえはなぜいつもそうなんだ。すぐ賭けに出る。一か八か。のるかそるか。
いままでは運と度胸でそれを勝ち抜いてきた。運と度胸だけで。
だが負けることもあるから賭けなんじゃないのか〉
〈しゃらくさいわ〉
〈どこまで巻き戻すつもりだ。時を〉
〈きさまに教える筋合いはない〉
〈やめろ。無駄だ〉
〈なぜだ。リセットポイントはいくらでもある。いくらでも〉
〈なぜわからない〉
ヴァレンティンがふっと微笑んだ、と思ってもらってもいい。
〈リセットポイントならおれにもいくらでもある。もし壇ノ浦でおまえに勝てていれば。もしおれと
〈もしきさまの親父が鞍馬寺にあずけられた源氏の
クロードの笑いには嘲りの響きがある、と思ってもらってもいい。
〈きさまに何がわかる。平氏のお坊ちゃま。
望まれて生まれ、愛されて育ったきさまに。
〈おれは父を知らない。母もほぼ覚えていない。
他人の中で育った。
自分が誰かも知らされず。一生光のもとに出ないように育てられた。
ある日知った。自分が何者かを。
家の再興という目標を。きさまらに息の根を止められた家をよみがえらせるという目標を。
その志を同じくする姉の存在を知った。
〈あの人に会った。涙を流して喜んでくれた。
すべてまかせると言ってくれた。
あの日に戻りたい。
〈戻りたい。
〈もう一度会って話したい。
話せば――〉
〈話せばわかってもらえるとでも言うのか。人の話を聞かないおまえが〉