ロッカバイ・ベイビー (5)
文字数 718文字
「アリちゃんごめん、遅くなった」アリアを固く抱きしめる。
「すごいよミラちゃん、いまの何? どうやって空中泳いできたの?」
「水蒸気に乗るの。今日は空気が濃いからできた。今度教えてあげる」手みじかに言って、アリアを抱いたままベンジャミンを見上げた。「ありがとう武蔵くん。この子に何かあったらあたしは腹かっさばいて死のうと思ってました」
男子二人の目に、賛嘆の色が浮かぶ。
彼らのあいだに
「場所を割り出すのに手間どったけど、まさか先を越されるなんて」とミランダ。「どうやってここへ?」
クリストフが口を開く前に、アリアがタンバリンを示して説明した。
「あたしがこれで佐藤くんを召喚しちゃったの。で、彼がリープで連れてきてくれた」
「これ召喚の術具だったの」
「そうみたい。でも、あたしには青いほうしか使えなかった」
「じゃ、やっぱり赤はあたしの。なら、もしかして」
赤いリボンのタンバリンをつかむと、一跳ねでミランダはシールドの上に出た。
「!」
他の三人が息をのむ間に、たん、と一打ち。
かなたで点滅していた火の球が、すうと落ちてきた。その首根っこを片手でつかんで、ふたたびシールド内へ飛びこむミランダ。
瞳孔を確かめ、頬を叩き、やおら彼の口をこじあけて口移しで息を吹きこんだ。
「ばかなの? あんな所にいたら酸欠で死ぬじゃない。きつねのくせに」
じっさいフロリアンは意識を失いかけていたのだけれど、原因は酸欠だけでなく、ミラちゃんのマウス・トゥ・マウスとかチャイナドレスの立て膝とかいろいろあった。