ロッカバイ・ベイビー (6)
文字数 947文字
例えば
同じ
樹木たちも同じだ。じわじわと根で水を、葉で光を、奪いあう。
相手の息の根を止めるまで。
ふつうなら数年や数十年にわたるその死闘を、いまはヒューマノイド型にみずからを変換している彼らは超倍速で行う。だから現象として以下のように「見える」かもしれないが、あくまでそれは「見える」だけだということを心しておいてほしい。いわば「a09m4iagkjsopk」などという文字列を画像に変換するようなものだ。
『平家物語』にいわく、「よッ
引きしぼった弓から矢が放たれ、風を切って飛ぶ。
あたかもそのようにクロードの《弦》から《矢》が放たれ、それをヴァレンティンの《刃》が打ち落とす。放っても放っても打ち落とされる。
じれたクロードは跳躍し、《刃》をふりかぶって打ちかかるが、たやすくかわされ、逆に足を《払われる》。そこをまた跳躍する。
いや、これも違う。刃物のやりとりのようなものではないのだ。
相手の深部に直接はたらきかける。揺さぶりをかける。
電磁波のようなものだ。相手の体内の水分子を激しく振動させる。電子レンジにかけたものが時には破裂してしまうように、これは容赦ない破壊力をともなう。
おわかりだろうが、
より多く水分を持つもの
がより強く揺さぶられ、熱せられ、バーストして散る危険性が高い。ひとことで言えば、心理戦に近い。
以下のような「
〈何しに来た〉
〈止めに。おまえが飛ぶのを〉
〈ふざけるな〉
〈人の話は聞くものだ〉
〈きさまのそういう人を馬鹿にした態度が聞く気を失せさせるんだよ〉
〈馬鹿にしてなどいない。落ちつけ。思い直せ〉
〈何を〉
〈自分でも無駄だとわかっているだろう〉
〈ほざけ〉