愛されたいの (2)
文字数 1,003文字
やっぱり鶴岡八幡宮でしょうと思ったのだ。誰がって、作者がだ。
広い。広々と明るい。そして見どころ満載。池もあって国宝館もあって和カフェもある。国宝館は仏教美術を中心とした文化財五千点を収蔵。和カフェの抹茶は有機栽培の一番茶だ(ことりっぷ情報)。
お花もいっぱい咲いてる(季節による)。
文句なしのデートスポットだ。
で、書きはじめたのだけど。
あまりに見どころ満載すぎてまたもや鎌倉ガイドの丸写しになりかけ、いったんアップしたのを取り下げていま書き直している。危ない危ない。あのまま行ったらたぶん、鳩サブレーを頭から食べるかしっぽから食べるか論争に突っこんでいた。迷走もはなはだしい。
ということで、ハトがクルックーと言っているのは、鶴岡八幡宮ではなくいきなり佐助稲荷だ。この章はどうしたって佐助稲荷に来なくちゃなんだから、もう来ちゃって正解だ。なぜ佐助稲荷なのかはあとで説明するから待っててください。
石畳の上で、優しくつつきあっている白いハトのオスとメス。そのむつまじい姿を見て、
(僕たちみたいだね)
なあんて言ってみたい北条政人オーギュストだが、言ったが最後すべてを失うことがわかっているので言えない。
そっと横目で見ると、水原由良カミーユは目を閉じて、一心に手を合わせている。
美しい。
やっと登場できたね政人くん。ごめんねスタンバイ長くて。忘れてたわけじゃないんだよ。
連日悪夢にうなされ(本編その5「骨は珊瑚、目は真珠(1)」参照)憔悴しているカミーユを気づかって、「たまには散歩に行こう」とオーギュストが誘ったのだ。いいね。
彼としては……、
彼としては、これは「かぎりなくデートに近い何か」なのだが、しかしデートではない、よな、やっぱり、ということはじゅうじゅう承知している。
カミーユとは伊豆の中学時代からのつきあいなのに、いまだに
「心おきなく語りあえる(異性の)親友」
という、よくある蛇の生殺しポジションに置かれたままなのだ。
男と女のあいだに友情は成立するか?という質問に、イエスと答えるかノーと答えるかは、ずばり、相手より多く惚れているかどうかで決まる。
澄んだ瞳でイエスと答える乙女は、男の気持ちなんかちっともわかっちゃいない。
全世界の清純な乙女たちよ。十代男子の禁欲を軽く見てはいけない。
君らの平和は、彼らの尊い犠牲の上に成り立っている。