シュガーとスパイス (7)
文字数 562文字
作者はある。
作者はこう見えて(どう見えて?)
しんと積もった雪の上に、彼はたたずんでいる。静止している。
神経をとぎ澄まし、じっと《聴く》。
このとき彼は、雪の下で息をひそめているハタネズミの気配ばかりでなく、
地球の磁場そのものを《聴き取って》自分自身の位置を割り出している、という説がある。
そして、いきなり跳ぶ。
助走なしにその場で、いきなり、高く跳躍する。
高跳びや幅跳びのアスリートのように走らない。
踊り手と同じだ。バレエの男性ダンサーや能楽師、狂言師。
とん、と着地したときにはすでに、彼のそろえた前足で、ハタネズミは首根っこを押さえつけられている。
波多野アリアも佐藤クリストフにそうして押し倒されながら、薄れていく意識の中で思っていた。
(これって床ドン?)
アリアの意識と同様、彼ら二人の姿もまた、その場からふっとかき消えたのだったが、
学園祭の明るい喧騒の中、その事実に気づいた者は誰もいなかった。
なぜと言うに、エピソード3「シュガーとスパイス」(5)の冒頭から(7)のこの最終行に至るまで、