きょうだいげんか:それぞれの言い分

文字数 1,585文字

義経「おれ平家討伐あんなにがんばったのにぜんぜん評価されない」
頼朝「だからその前に、どうして梶原パパ※1の言うこと聞かないの」

※1梶原パパ=梶原平三景時。梶原源太景季の父。
頼朝が挙兵直後、石橋山の戦で大敗したときの命の恩人。その功で頼朝の信任を得て、源平合戦のさいに義経の補佐役を受け持つ。
高校では義経たちのクラス担任を受け持つ。教科は数学。

頼朝「梶原先生泣いてたよ。『手に負えません』って。『私もう辞職して鎌倉帰りたいです』って。
わざわざお願いして担任についてもらったわたしの面目まるつぶれじゃない。
屋島では先生が無茶するなって止めてるのに嵐のなか出発しちゃうし。
ついてこないやつは射殺すって脅したんだって?」
(佐藤兄弟が後ろのほうでうなずいている)
義経「でもふつう三日かかるとこダッシュで六時間で渡ったよ?(Vサイン)」
頼朝「その結果オーライやめて。ほんと寿命ちぢむ」

頼朝「梶原先生がせっかく『逆櫓(さかろ)』デザインしてくれたのに」
義経「ダサい」
頼朝「前だけじゃなくて後ろにも漕げるようにするって名案だよ? 何かあったときのために」
義経「その発想がチキン」
頼朝「チキンじゃなくてセーフティネットって言うの」

頼朝「壇ノ浦でも梶原先生がわざわざ先陣買って出てくれたのに」
義経「いらん。超いらん。なんでおっさん先頭に立たせておれ後ろにいなきゃなの?」
頼朝「ふつう総大将は先頭に立たないんだよ?」
義経「『ふつう』とかいらん」
頼朝「勝ったからいいけど、負けてたら」
義経「勝ったからいいじゃん」
頼朝(嘆息)

頼朝「順番前後するけど、一ノ谷のときだって、鵯越(ひよどりごえ)」※2
義経「あー(得意げ)」
頼朝「急坂をさ、鹿が駆け下りるの見て、『鹿が下りられるなら馬も下りられる』って一人で駆け下りちゃったんだって?」
義経(Vサイン)
頼朝「総大将にそういうことされたら家臣たちかわいそうでしょ?」
義経「みんな喜んでたよ?」
頼朝「じゃなくて危なすぎ。ほんとやめて。だいたい、鹿と馬ちがいすぎ。カモメが飛べるならペンギンも飛べる的な暴論でしょ」
義経「そっちのほうが意味わかんない」
頼朝「弁慶くんが『おれは重いからこんな坂乗って下りたら馬がかわいそうだ』って自分が馬をかついで歩いて下りたっていうの聞いて感動した。少しは彼のそういう思いやりとか見習えないの?」
義経「人は人、自分は自分だよ」
頼朝(嘆息)

頼朝「それに何あれ、戦勝報告、『勝ったよ』ってスタンプ1個」
義経「え、みんなそうじゃないの?」
頼朝「梶原先生は、場所とか死者数とか敵将の名前とかすごくきちんと書いてくれて」
義経「あーうざ。まじうざ。そんなに梶原パパ好きなら梶原パパとけっこんしたら」
頼朝「しないよ(怒)」

頼朝「最悪なのは、勝手に京都に行って!」
義経「だって勝ったんだから行くでしょ、『そうだ京都行こう』って!」
頼朝「わたしの許しもなしに勝手にお上から表彰されて!」
義経「だってお上から表彰されたら姉者にも喜んでもらえると思ったんだもん!」
頼朝「最初に言ったじゃない、まずわたしに報告しなさいって!」
義経「したよ!」
頼朝「スタンプ1個ね!」
義経「でもしたじゃん!」
頼朝「わたしより先にお上のとこ行っちゃだめなの!」
義経「なんで?」
頼朝「だから! 最初に説明した! 約束した」
義経「そうだっけ?」
頼朝「そう! そういうルール決めた。聞いてなかったね人の話」
義経「うん」
頼朝(嘆息)
義経「あのさ?」
頼朝「うん?」
義経「そのルールってさ、姉上ファースト」
頼朝「何」
義経「もしかしてジェラシー?」
頼朝「はあ?!(激怒)」

一同(ギャラリー)「まあまあまあまあ」(二人を引き離す)


※2 鵯越について注を書いていたらどんどんどんどん長くなって(笑)収拾がつかなくなっちゃったので、脱線の脱線で申し訳ないけれども、新しいページを立てて書くことにしました。
2ページ後をご覧ください。
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登場人物紹介

波多野静/アリア(はたのしずか/ありあ)


この物語のヒロイン。明るく素直で天然。特技は歌とダンスと水泳。惚れっぽいのが玉にキズ。海霊族(ネレイド)。

波多野遥/ミランダ(はたのはるか/みらんだ)


アリアの姉。妹思いでクールかつ熱血。特技はアリアと同じく歌とダンスと水泳。アリアとよく似た容貌だが、5センチ背が高い。海霊族(ネレイド)。

水原九郎義経/クロード(みずはらくろうよしつね/くろーど)


アリアの同級生。小柄だが学年一の美貌で、すでに女子の半数は陥落させている(推定)。身体能力、とくに跳躍力に優れ、お気楽な言動で周囲をふりまわす。ベンジャミンたちから「御曹司」と呼ばれている。樹霊族(ドリュアード)。

武蔵弁慶/ベンジャミン(むさしべんけい/べんじゃみん)


アリアの同級生。筋骨たくましい大男だが、冷徹な知性派でもあり、クロードの暴走をつねに(かろうじて)食い止めている。人馬族(ケンタウロス)。

佐藤四郎忠信/クリストフ(さとうしろうただのぶ/くりすとふ)


アリアの同学年生(クラスは違う)。長身で俊足だが、内気で目立つのが苦手。極端な無口。女子に対する耐性ゼロ。水狐(ウォーターフォックス)。

佐藤三郎嗣信/フロリアン(さとうさぶろうつぐのぶ/ふろりあん)


クリストフの兄。容貌・性格・身体能力ともにクリストフとよく似ている。ただし左肩から右脇腹にかけて貫通創あり(一度死亡)。火狐(ファイアーフォックス)。

平野知盛/ヴァレンティン(ひらのとももり/ばれんてぃん)


平野一族の若き当主。物腰柔らか、文武両道の公達(きんだち)。現在はアリア姉妹の実家に客人として身を寄せる。クロードとは因縁の仲。樹霊族(ドリュアード)。

水原由良頼朝/カミーユ(みずはらゆらよりとも/かみーゆ)


クロードの異母姉。アリアやクロードたちとは別の全寮制高校に学ぶ。男装して生活している。頭脳明晰、真面目で誠実だが、男心も女心もまったく解さないのが玉にキズ。樹霊族(ドリュアード)。

北条政人/オーギュスト(ほうじょうまさと/おーぎゅすと)


カミーユの同級生。寮では隣室。そつのない完璧な優等生。影となり日陰となり(?)カミーユを支えるが、いまだに友達以上恋人未満の生殺しポジションに置かれている。水霊族(ナイアード)。

梶原源太景季/エドガー(かじわらげんたかげすえ/えどがー)


カミーユの同級生。佐々木エドマンドと血縁者ではない。橇犬族(ハスキー)。

佐々木四郎高綱/エドマンド(ささきしろうたかつな/えどまんど)


カミーユの同級生。梶原エドガーと血縁者ではない。橇犬族(ハスキー)。

遠藤盛遠/文覚/バルタザール(えんどうもりとお/もんがく/ばるたざーる)


カミーユとは中学時代からの先輩後輩の仲。アリアとミランダとは江ノ電の中で知り合う。荒海を一喝して静める法力の持ち主。性格は豪快で、人情に厚い。水霊族(ナイアード)。

土佐昌俊/ジョバンニ(とさしょうしゅん/じょばんに)


ベンジャミンのかつての修行仲間。その後カミーユに仕えていたはずだったが……。土霊族(ノーム)。

後白河雅仁/ローレンス(ごしらかわまさひと/ろーれんす)


法皇。この国の権力構造の最高位にありながら、一見ひょうひょうとした異端児の風貌を持つ。が、その本心は未知数。バルタザールとは那智の滝での修行仲間。龍族(ドラゴン)。

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