ラベンダーはブルー (4)
文字数 675文字
なんか妹が地上見たいわーってなって、姉がじゃあついてってあげるーってなって、まあ、短期留学? みたいな?
「姉は妹を守りたいだけなんで、おれらにはできるだけ関わりたくないらしくて。
御曹司に直談判するって言うから、それだけはやめろと言っときました」
「よく言った」
リーダーの唇にうっすら浮かんだ笑みを見て、あ、けっこうあの子に本気なんだとクリストフは思う。遊びじゃなかったんだ。
ほっとして、でも改めて胸の奥底が痛むような、気もする。
「どうせ妹にはつつぬけだと思いますが」しゃべりにくいので、フロリアンは口のわきの絆創膏をむしりとった。ぷつりと吹き出てきた血の玉を手の甲でぬぐう。ボディペインティングのような赤い筋が端正な横顔につく。
「実家には言うなと。本人たちのためにもならないと。そこも念を押しときました」
「実家ね」
「あっちの一族は中立なんです。ほんと平和な人たちで。武器とかぜんぜんないらしいし」
「まじか。でも『やつら』との関係は」
「そこです。『やつら』はあっちで歓待されてるんです。おもてなしってやつです。だからあの人たちが『やつら』に同情して味方に付くとやばい。少なくとも——」
「少なくとも」ゆっくりとクロードがつぶやく。「『やつら』が昇ってこようとしたとき、止めてくれる確率は低いな。というか、ないな」
重い沈黙が流れる。
「そうなんです」フロリアンも低くうめいた。「ルートが開いてしまったんで。あの姉妹が昇ってきたときに」