【再検証】坂落とし、あり? なし? なしよりのあり?
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そしてそのエピソードのほとんどがたぶんウソ(笑)なのだが、
中でもとくに「義経と言えば」、「鵯越(ひよどりごえ)の逆落とし」だろう。
断崖絶壁を「われに続け!」って馬で駆け降りて、平家の後ろを突いちゃって大勝利というあれだ。
ところがじつは、義経はひよどりごえを駆け降りていないらしい!
という説を初めて読んだときはガーン! と思ったけど、大河ドラマのおかげで最近逆に有名になっちゃってますね。
・鵯越という名の場所は十キロも離れた山奥
・だから大将である義経が大軍を率いてそんな細い迂回ルートを通るのはおかしい
・逆落としは他の誰かにまかせた遊撃隊がやったにちがいない
・そもそも、馬は崖を降りられない
この「義経坂を落としてない説」1980年代からすでにちらほら出始めていたらしいけど、たぶん最初にはっきり主張した本はこれじゃないでしょうか。
『源義経の合戦と戦略――その伝説と実像』(菱沼一憲著、角川選書、2005年)
わかりやすくて明快で公平で、とても良い本です。お勧めです。
ところがその後、菱沼説に対する反論、つまり「やっぱり落としてる説」を読んでしまった。これがまた面白かったのだ。
「義経は鵯越じゃなくて本当に一ノ谷の真後ろの崖、鉢伏山を降りたのだ」
という。
『源義経 後代の佳名を
近藤先生によると「馬は崖を降りられる」のだそうです。「訓練しだいでいくらでも可能」だそうです。
証拠として19世紀末スペインの騎馬訓練の写真が転載されていて(127ページ)、それを見ると本当にほぼ90度の斜面を馬に乗った将校が降りてる!!
えええええ、すごい!!(@_@)
源平のころのお馬さんは小さいし、乗ってる人も重い鎧を着ているから事情が違うとは思うけれど、菱沼先生とは逆に、近藤先生の熱さというか義経好きすぎる感に圧倒されて、
「そうだよやっぱり義経、逆落とししたんだよ!」
と手をグーにして思っちゃいました。笑
けっきょく、落としてても落としてなくても、八百年後のいまもこんなに話題を提供してくれる義経。
それだけですでに、ただ者じゃないってことですよね。^^