続きょうだいげんか:それぞれの言い分

文字数 1,468文字

頼朝「しかも! わたし討伐の院宣(いんぜん)とかお上にもらって! あり得なくない? じつの姉コロス許可ふつう他人にもらう?」
義経「あー(頭ぽりぽり)あれはちょっとカッとなってつい」
頼朝「わたし姉なだけじゃないからね、上司だよ上司。主君」
義経「わかってますって(ちょっと声が小さくなる)」
頼朝「特別扱いできなかったの、わかる? 他の人たちの手前。可愛い弟だとか優秀だとかそういうことで」
義経「(ぱああ)可愛い? 優秀?」
頼朝(しまった)

義経「でも腰越ブロック酷くない?」
頼朝「だからあれはわたしファーストルール破った見せしめだって。お仕置き」
義経「本州横断して帰ってきたのよ。鎌倉目の前にして入れてもらえないって酷すぎ(泣)」
頼朝「だから」
義経「どうせならもっと早くブロックしてよ。静岡とか名古屋とかで(泣)」
頼朝「そっちか」
義経「箱根とか小田原とか(泣)」
頼朝「おい」
義経「富士急ハイランドとか(泣)」
頼朝「こら!」

義経「姉者だってけっきょくおれ討伐の院宣もらうじゃない」
頼朝「うんあれ正直もらえると思わなかった」
義経「ふつうないよな。両方に討伐命令って」
頼朝「ないない」(二人盛り上がる)
義経「何考えてるんだろうねゴッシー」
頼朝「ゴッシー?」
義経「後白河さん(法皇)」
頼朝「ゴッシー呼ばわりか!」

義経「あの人けっこういい人だよ?」
頼朝「ぜんぜん! あいつ本当やばいよ。日本一の大天狗」
義経「おれ天狗は怖くないから」
頼朝「怖がれ」
義経「むしろ得意?」
頼朝「話ちがう」
義経「あの人もね、かわいそうなの。ずーっと優秀なお兄さん(崇徳(すとく)上皇)と比べられて、『お上の器じゃない』とかさんざん言われて。おれもさんざん姉者と比べられて『大将の器じゃない』って梶原パパに罵られてまじむかついてたから、ゴッシーの気持ちめちゃくちゃわかって二人で盛り上がった」
頼朝「そこか?」
義経「だって崇徳さん凄くない、百人一首に入ってるんだよ? ちはやふる」
頼朝「ちはやふるは他の人の歌だから」※1
義経「おれも和歌勉強すればよかったー」
頼朝「わたしはしたよ?」※2
義経「ほらまた! また自慢する!」
頼朝「自慢じゃないよ! 人の努力を自慢言うな! わたしが必死で勉強してるあいだ、あんた辻斬りしてたんじゃない。弁慶くんが止めてくれるまで」
義経「あれも努力だよ? 剣の修行。後で姉者の役に立ったよね」
頼朝「まあそうだけど」
義経「姉者の和歌の勉強おれの役に立ってないじゃない」
頼朝(こいつと話してるとほんと調子狂う)

義経「あーわかった。やっぱジェラシーでしょ。おれとゴッシーなかよくしたから」
頼朝「はあ?!」
義経「心配しないで。いちばん好きなのは姉者だから。マイ・ハート・ウィル・ゴー・オンだから(投げキス)」
頼朝「アホか?!(激怒)」
一同「まあまあまあまあまあまあ」(二人を引き離す)


※1 崇徳院は弟の後白河院との政権争いには敗れたが、当代きっての歌人として名を残した。たぶんこのおはなしにもそのうち出てくる。御製「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ」(流れが速すぎて滝川が二つに割れちゃったけど、いつかまた会えるよね、という恋の歌)。
ちなみに「ちはやふる(神代も聞かず竜田川からくれないに水くくるとは)」は在原業平の歌で、このおはなしにはとりあえず関係ない。

※2 以前(楽屋トーク(1))「源氏サイドで歌詠める人いない」という話をしていたけど、なんと頼朝は、詠んだ歌が二首も新古今和歌集に入選している! 源氏チームだって武闘派の体育会系ばっかりじゃなかったのだ。
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登場人物紹介

波多野静/アリア(はたのしずか/ありあ)


この物語のヒロイン。明るく素直で天然。特技は歌とダンスと水泳。惚れっぽいのが玉にキズ。海霊族(ネレイド)。

波多野遥/ミランダ(はたのはるか/みらんだ)


アリアの姉。妹思いでクールかつ熱血。特技はアリアと同じく歌とダンスと水泳。アリアとよく似た容貌だが、5センチ背が高い。海霊族(ネレイド)。

水原九郎義経/クロード(みずはらくろうよしつね/くろーど)


アリアの同級生。小柄だが学年一の美貌で、すでに女子の半数は陥落させている(推定)。身体能力、とくに跳躍力に優れ、お気楽な言動で周囲をふりまわす。ベンジャミンたちから「御曹司」と呼ばれている。樹霊族(ドリュアード)。

武蔵弁慶/ベンジャミン(むさしべんけい/べんじゃみん)


アリアの同級生。筋骨たくましい大男だが、冷徹な知性派でもあり、クロードの暴走をつねに(かろうじて)食い止めている。人馬族(ケンタウロス)。

佐藤四郎忠信/クリストフ(さとうしろうただのぶ/くりすとふ)


アリアの同学年生(クラスは違う)。長身で俊足だが、内気で目立つのが苦手。極端な無口。女子に対する耐性ゼロ。水狐(ウォーターフォックス)。

佐藤三郎嗣信/フロリアン(さとうさぶろうつぐのぶ/ふろりあん)


クリストフの兄。容貌・性格・身体能力ともにクリストフとよく似ている。ただし左肩から右脇腹にかけて貫通創あり(一度死亡)。火狐(ファイアーフォックス)。

平野知盛/ヴァレンティン(ひらのとももり/ばれんてぃん)


平野一族の若き当主。物腰柔らか、文武両道の公達(きんだち)。現在はアリア姉妹の実家に客人として身を寄せる。クロードとは因縁の仲。樹霊族(ドリュアード)。

水原由良頼朝/カミーユ(みずはらゆらよりとも/かみーゆ)


クロードの異母姉。アリアやクロードたちとは別の全寮制高校に学ぶ。男装して生活している。頭脳明晰、真面目で誠実だが、男心も女心もまったく解さないのが玉にキズ。樹霊族(ドリュアード)。

北条政人/オーギュスト(ほうじょうまさと/おーぎゅすと)


カミーユの同級生。寮では隣室。そつのない完璧な優等生。影となり日陰となり(?)カミーユを支えるが、いまだに友達以上恋人未満の生殺しポジションに置かれている。水霊族(ナイアード)。

梶原源太景季/エドガー(かじわらげんたかげすえ/えどがー)


カミーユの同級生。佐々木エドマンドと血縁者ではない。橇犬族(ハスキー)。

佐々木四郎高綱/エドマンド(ささきしろうたかつな/えどまんど)


カミーユの同級生。梶原エドガーと血縁者ではない。橇犬族(ハスキー)。

遠藤盛遠/文覚/バルタザール(えんどうもりとお/もんがく/ばるたざーる)


カミーユとは中学時代からの先輩後輩の仲。アリアとミランダとは江ノ電の中で知り合う。荒海を一喝して静める法力の持ち主。性格は豪快で、人情に厚い。水霊族(ナイアード)。

土佐昌俊/ジョバンニ(とさしょうしゅん/じょばんに)


ベンジャミンのかつての修行仲間。その後カミーユに仕えていたはずだったが……。土霊族(ノーム)。

後白河雅仁/ローレンス(ごしらかわまさひと/ろーれんす)


法皇。この国の権力構造の最高位にありながら、一見ひょうひょうとした異端児の風貌を持つ。が、その本心は未知数。バルタザールとは那智の滝での修行仲間。龍族(ドラゴン)。

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