ラベンダーはブルー (5)
文字数 1,040文字
今度は窓枠から思いきり外へ乗り出しているクロード。ほとんど落ちそうだが、落ちない。
「とくにトモっちがめんどくせー。あいつなんであんなめんどくさいの? いつまでもねちねちねちねち。ねえおれけっこう好きなのよトモっち、個人的には。デキるしきれい好きだし、ほら、
あ、もしかしてあんがい、あいつもおれのこと好きだったり——」
「しません」
ベンジャミンはあきれ顔がデフォルトになりつつある。
「忘れたんですか御曹司。あんた、あの一家まるっと滅ぼしてるんですよ。全員沈めたじゃない、壇ノ浦で」
「何人か助けたけど?」
「そういう問題じゃ」
「だからってさー、ここまで恨まれる筋合いは」
「あるよ」
ボケとツッコミの永久機関みたいな二人だが、『義経記』だってわりとずっとこんな感じなんである。嘘だと思われるかたはご一読あれ。
「壇ノ浦と言えば」何が〈言えば〉なのかわからないが、クロードは微笑んでフロリアンに向きなおった。「おれ的には『この一戦』っていうベストはむしろ屋島なんだよ」
フロリアンはびくっと身を震わせ、
クロードが近づいて、頬の血を自分の手で優しくぬぐってやると、もう一度身を震わせた。
ああ、とクリストフは思う。
こうやっておれたちは、この人にやられていくんだ。
「おれ本当泣いた。おまえがおれをかばって矢に当たってくれたとき」屋島の合戦の折、
「
「いったん死んだのを呼び出して悪かったけど、
「できます」
佐藤兄弟の声はシンクロした。やや芝居がかっている気がうっすらとしなくもないが、どうしようもなく
「ということで、ベン」大男をふりかえる。「アリアちゃん船に乗せていい?」
苦りきった表情で、ベンジャミン武蔵坊が答える。
「だめです」