ちょっと休憩 楽屋トークpart 3
文字数 1,552文字
フロ&クリス(もじもじ)←(おまえ言えよ)(兄者言って)とこづきあっている
ベン「何よ」
フロ「あの一度訊きたかったんすけど訊いていいすか」
ベン「だから何よ」
フロ「武蔵さんと御曹司のなれそめの」
ベン「なれそめ言うな」
ベン「みんな忘れてるけどおれいちおう出家してんのよ?
ベン「まああれだろ? 『京の五条の橋の上』っての期待してんだろ」
フロ&クリス(こくこく)←うなずく
ベン「おれが辻斬りして刀千本集めようとしてたのを、千人目に通りかかった御曹司が闘って勝って止めたっつーね。
まあ、あれ面白いからもうあきらめて反論しないことにしてるけど」
フロ「ちがうんですか」
ベン「考えてよ。おれ山法師で独り者よ。刀999本隠す所どこにあるの。押し入れに入りきらねーわ」
フロ&クリス「あー(たしかに)」
ベン「だいたいおれコレクションの趣味ねーし。この長刀一本あれば足りるわ」
クリス「シンプルライフ派ですよね武蔵さん」
ベン「引っ越し多かったしな」
クリス「マンガ本とかも読んだら即ブックオフ行きますよね」
フロ「じゃあ五条大橋まるっとフィクション?」
ベン「いやいちおう会うには会ったの」
ベン「聞いて。これ能の『橋弁慶』っていうのはこのバージョンなんだけど、おれ的にはこっちが広まってほしかったわけ。もうあきらめてるけど。
おれがね、一時期ちょっと願掛けとかしてて夜お詣りしてたら、知り合いに『なんか五条の橋に化け物出るから今夜はやめとき』つって止められて」
フロ&クリス「化け物??」
ベン「『なんかちっちゃくて可愛いチョウチョみたいな化け物』つって」
フロ「なにそれ」
ベン「『十二くらいの子どもが小刀持って辻斬りしててめっちゃ強えからやばい』つって」
フロ&クリス「まじで?!」
フロ「じゃ何、辻斬りしてたの御曹司のほう??」
ベン「そ」
フロ「なんでまた」
ベン「剣の腕みがいてたに決まってんじゃん」
クリス「まじか」
ベン「しかも意味不明に女装してんのよ」
フロ&クリス「出た!」
ベン「しかも似合うのよ」
フロ&クリス「似合う似合う似合う」
(三人、しばし盛り上がる)
クリス「夜な夜な女装して辻斬りってどんな小学生」
ベン「橋渡っててさ、すれちがって、ベールとかかぶってるから女の子だと思うだろ。
やっぱ女の人には礼儀正しくしなきゃなと思うから、道ゆずろうとしたの」
フロ「紳士ー」
ベン「したら、すれちがいざま、この長刀の柄のところガツン!つって蹴り上げられて」
クリス「うわ乱暴だな」
ベン「基本乱暴じゃんあの人」
ベン「あとはみんな知ってるとおり。もうね、ちっちゃくてぴょんぴょん跳ぶからぜんぜんつかまんないの。おれさんざん
クリス「そこはお能にないでしょ」
フロ「じゃあぜんぜん逆じゃないすか。やばいの御曹司のほうだったんじゃないすか」
ベン「そ」
クリス「あの人見た目で得してますよね」
ベン「そ。おれ逆な、おれほんと見た目で損してる。ほんとは優しいのよ(嘆)」
フロ&クリス「知ってますって(口々になぐさめる)」
フロ&クリス(もじもじ)←(おまえ言えよ)(兄者言って)とこづきあっている
ベン「何よ」
クリス「あの一度お願いしたかったんすけどいいすか」
ベン「だから何よ」
クリス「たてがみさわらせて?」
ベン「いいよ」
フロ&クリス「わーい!」(ベンの背中に飛び乗る)
クリス「ふさふさだー」
ベン「あんま引っぱんなよ。引っぱったら落とすぞ。こら」
フロ「そうだ、さっき言ってた『一時期ちょっと願掛けとかしてて』って何の願掛けだったんすか?」
ベン「(きゅうに赤面する)秘密」
フロ&クリス「えー?!」
フロ&クリス「なになになに教えて教えて教えて」
ベン「うっせーわ。降りろ」