愛されたいの (10)
文字数 430文字
子鹿のように駆け去ったカミーユの残像を目で追って、放心状態で立ちつくしているアリア。
そんな妹を、ミランダは痛ましい思いで見守っていた。
(うん。きついよね。あんな見せつけられて……。
姉君、美しくて。賢くて。強くて礼儀正しくて部下思いで。
完璧)
(無理だよアリちゃん。あんたが
早くあきらめたほうが)
そう思ううちにも、アリアはふらふらとおぼつかない足で前へ踏み出した。
何かつぶやいている。
「『愚弟が』……『お見苦しいところを』……」
うっとりとうるんだ瞳。熱い頬に手を当て、へなへなとその場にくずれ落ちる。
「お
(そっちか)
ここにも一人、頭を抱える姉がいる。
美しい者には誰彼かまわずフォーリンラブしてしまう妹の惚れっぽさは以前から心配の種だったのだが、ここまで見境がないとは思わなかった。
もう勝手にして、という感じである。