第50話 お出かけ準備。

文字数 1,755文字

わらわの大陸とちがって川が少ないからの…。ちと移動は面倒になりそうじゃな。

 ズーミちゃんとユニちゃん二人の頑張りで、あっという間に風の大陸に到着した私達。

 まだ海の見える陸地端で、これからの旅計画を整える。

いよいよ…あの女との対決ユニね…!

 ぴょんぴょん跳ねながら、拳を宙に素振るユニちゃん。

 やるき満々である。


タチ…今戻るからね。

 今踏みしめてるこの大地のどこかに、タチがいる。

 一歩ずつどころか、二人のおかげで百歩づずぐらいタチの元に戻れている気がする。


 そういえば、戻るといえば…。


ポン。


 軽く、ゆる~く。空気が弾けた音がした。

 音のした方をみると、さっきまで拳を構えていたユニちゃんが消えている。


…あっ。

 視線を下げると、出会った頃の小さくて愛らしいユニちゃんがそこにいた。

 そうそう。そのコトを聞こうと思ってたんだ。


 そろそろ戻ってもおかしくないんじゃないの?って。

うむ。良いタイミングで戻ったの。海上でなくてよかった。

 ズーミちゃんも変化に気づいて、うむうむとうなずく。

 きょとんと立ち尽くしていたユニちゃんは、自らの状況を把握し地団駄を踏んでいるが、その姿が凄く可愛らしい。

 

 久しぶりにみたけど、やっぱりこの姿のユニちゃんは反則だ。

 可愛らしすぎる。


よしよし。ここからは私が運んであげるからね。今まで沢山ありがとうね。

 闘志に満ちていたユニちゃんには申し訳ないが、私にとっては好都合。

 タチと再会したとたん、決闘が始まるのは喜ばしくない。

 

 少し拳は収めてもらい、共に時間を過ごし、話し合いでならせば…。

 仲良くなるとも思えないけど。


水の大陸まで噂は流れて来とった。この地なら少し聞き込めばタチの居場所もわかるじゃろう。
そうだね。あっちに見える村で、食料とか補充するついでに話を聞いてみるよ。

 一般的な人間の形をしているのは私だけ、地元を離れたズーミちゃんはただの魔物として攻撃されかねないし、ユニちゃんは捕獲される危険がある。

 だから聞き込みや、取引は私の役割だ。


 ここに着てやっと役に立つ場面が来た。

じゃあ。ちょっと行ってくるね!日落ちするまでに帰って来るから。
うむ。気を付けるんじゃよ?今のお主だいぶちびっ子じゃからの。夜の一人歩きはさせとうない。

 優しい保護者のズミママの心配を胸に刻み、買い物の最終確認をする。

 そのまま「子供のお使い」状態だ。

 

 ズミママの言う通り、買う物の復唱をして、村に歩きだそうとする私の頭に、ポフリと柔らかいなにかが降ってきた。


 お洋服だ。


 足元に貼り付いたユニちゃんが、じーっと私の方を見上げてる。

 無言の圧力。

…約束は約束だからね。これに着替えればいいんだよね?

 にっこり笑顔でうなずくユニちゃん。反則的に可愛らしい。

 用意されたお洋服が、いままでの中で一番露出が少ないのは、一人で買い物予定の私を思っての優しさだろうか?

 

 ごめんねヘソ出さないといけないなんて縛りもあるのに…。

 でも出してないと体調崩しちゃうんだ。

ほら、わらわも手伝ってやるから急げ。明るいうちにすませんとな。

 水上生活で毎回着替えの手伝いをしてくれてたから、もうお手の物。

 私の脱いだスカートを畳み、一緒に服のボタンをとめてくれる。


 あぁ…だめだ、ズーミちゃんが優しすぎて一人じゃ生きてけない体になりそう。

私、ズーミちゃんの子供に生まれたかったな。
バカゆっとるんじゃない。全ての始まりであるお主が…口にすると違和感しかないじゃろう。信じがたいがの。

 たぶん、私が神様だってことは完全に頭から抜けてたズーミちゃん。

 そりゃ~ね。どこの世界の神様だったら、こんなだらしのない存在で許されるのか。

 

 最後にネクタイを締めてもらって、お出かけ準備終了。

 さぁ、行くとしますか。

待て。頭のリボンが曲がっとる。せっかくの可愛い仕上がりが台無しじゃ。
…ん。ありがとう。
ついでにクシも買ってこい。潮風で髪が少し痛んどる。綺麗な髪がもったいないじゃろう。
わかった。忘れない様にする。

 ズミママのおかげで、服装もばっちり決まったし、ユニちゃんも満足そうにフモフモ震えてる。

 

 今度こそ出発!

 2人に手を振り、しばしのお別れ。


 買い物と聞き込みぐらい、一人でできるさ!

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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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