第5話 えっ?いまなんて?

文字数 1,462文字

はっはっは!冗談だ!そう怯えるなナナ!
 機嫌を伺うように見上げる私に構いなく、楽しそうに笑うタチ。
(絶対嘘だ…!本気だった…!)
無理やりされるのはいけるが、する方はそうでもない!仲がいい奴だけにだ!
そ…そうですか…
可哀想すぎると萎えるからな。愛がないと燃えん!
どこに愛が!?
溢れているだろう!この私に!
 この人の自信はいったいどこから溢れてくるのだろう?

 豊かな源泉をお持ちなのは十分わかったけど…。

愛とは他者を慈しみ思いやる――
フン!慈愛や友愛か?そんなもの幻だ。
 つまらなそうに、私の言葉を聞き終わる前に鼻で笑った。せめて最後まで聞いてほしい。


なっ…!あなたは勝手に押し付けてるだけじゃない!
それこそ愛だ!愛とは病!愛とは炎!愛とは我欲!
絶対違う!そんな小さなものじゃない!
 つくづく価値観の合わない人間だ。
ふむ…。誰かに愛されたことがないのだな。愛らしい奴め。
(この女…!私以上に人に愛されたものなんて…!こっちは神様だぞ!!)
 安っちい憐みの視線が私を逆なでするが、あまり声をあらげられない。

 だって怖いもんこの人。

ズーミに立ち向かう度胸、ウブなありよう。実に私好みだ!よかったら一緒にこないか退屈させんぞ?
…私にも目的がありますので。
 もちもちの甘いお菓子を食べるというね!美味しいもの食べて、タチの事なんて忘れるんだ!
そうか…残念だ。ズーミといえばあの水攻めもなかなか良かったな…。どうだ?私と一緒にいればきっとナナも受けれるぞ?
(どういう口説き文句だ。)
と~っても魅力的なお誘いですけど遠慮しておきます。
死ぬ直前で、今度は私が助けてやるから、じっくり味わっていいのだぞ?
 眉を八の字に曲げ、寂しそうに物騒な特典をアピールしてくる…コロコロ変わる表情なことで。
 この人本気で思ってるんだろうな…何事も経験!を否定するつもりはないけど…水攻めって…。
どうだ?せめて神殺しの剣を手に入れるまで一緒にいないか?
 やだやだ絶対一緒になんか行動しない。する理由がない。
丁寧におことわ――神殺しの剣…?
 何その字面だけで鳥肌の立つモノ…。
売られた喧嘩を買うためにな!まずは戦力強化というわけだ!
うってない!うってません!
なぜナナが否定する?今しがたズーミに襲われたのを見ていただろう?
えっ…えっと…
 だめだ、説明が難しい…というか素直に「私が神様で、そんな支持飛ばしてませんもん!」
 なんて言った日にはどうなるものか…この場でたたき切られそうだ。


どうだ?興味ないか?神を恨んだ人間達が作り出した剣…!この水の化身の土地にあるはずなんだ!
 ぶるぶる!体がすくんで震えてしまう。
 え?何?知らないうちにそんなモノ作られちゃってたの?


どうした?寒いか?日も落ちてきたしな
 確かに、見渡すと夕焼け空もどこへやら、私の恐れを煽るように夜が迫っていた。
 当然のように私の腰に腕を回すタチ。やってる行為は格好よさげだけれど、下心しか感じない。


あの…えっと…やっぱりご一緒していいですか?
 するりと巻き付く腕から逃れつつ決心する。
(だめだ…!この人放っておくと絶対私殺されそう…!)
 神殺しの剣…切られたらめちゃくちゃ痛そうだ。

 死んでもいいけど痛いのだけは嫌だ。


もちろんだ!最近寂しい一人寝が続いていてな!パートナーを求めていてな!
え~。あぁ~…そういうのはちょっと~
今日はもう暗いここで野営だな。ゆっくりしていていいぞ!準備は私がヤルからな!
まずは、明日の朝を無事で迎えられるのか…そんな心配がむねいっぱいに広がった。
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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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