第39話 体の把握。

文字数 3,543文字

 風の大陸端から、聖地パンテオンに向かうため北へ北へと、馬を進め続ける毎日。
力自体は馴染んでいるようだな。
うん。すっごくしっくりきてる

 夕食の煮込み上がり待ち中。

 黒衣の男の話になり「私も戦力になりたい!」と言ったら、タチが指南を始めてくれた。


 両の手を水玉に包み、軽く拳を振る。

 ズーミちゃんがくれた「源」の力は、思った以上に自在に扱えている。

 元は自分のモノなのだから当然なんだけど…。

問題は体の方だな…。どうにも動きが硬い。抱かれている時はフニャフニャなのにな。
一言よけい。

 タチの方に拳を伸ばし、小さな水の玉を飛ばす。鼻先を濡らしてやる…!

 そんな私のちょっぴりした反抗心は、顔を傾けるだけなんなく躱されてしまう。

 わかっているが、身体能力も反射神経も比べ物にならない。


まずは目を閉じて、力を抜け。
…脱力。
 大人しく、言われた通りにダラリと立ち尽くす。
いいぞ。肩幅まで足を広げろ。…あと私は先生と呼べ。
タチ。そういうの好きだよね。

 今、思いつきで足されたであろう呼び方。

 三日前は、馬上で突然「おねーさま」と呼ばされた。

色々味わいたいのだ…!ナナの姉にも!主人にも!先生にも!全ての関係あらゆる角度でお前を楽しみたい…!
わかりました。せんせー。だからそんなにコーフンしないでください、せんせー。
あぁ…!いいぞナナ!私が先生だぞ!

 言い合いじゃ勝てないし、いや、肉体的にも勝てないんだけど、何より嫌でも無いので乗っておく。

 タチが楽しそうなの見てると、私も元気が出るし。

このぐらいでいい?
 目を閉じたまま、タチの声がする方に顔を向けて、広げた足幅を確認ねがう。
もう少し、開きなさい。あと「いいですか?」だぞ。

 タチが私の内ももをペチペチ叩く。

 言われるがまま、もう少し足を広げる。

これぐらいでいいですか、せんせー?

チュ。


 馴れっこになってきた感覚を唇に覚え、目を開く。

いま。キスしたでしょ?
ナナが言いなりで可愛いのがイケナイ。
いけないの?
いや。とっても良い子だ!…だが目は閉じてないとだめだぞ。

 フル族の所を出てから、日に5回ぐらいはキスをしてる。

 朝と寝る前は確定で、隙あるごと暇あるごとに「されてる」成分強めのヤツを。

ん…。次は?
 もう一度目を閉じて、次の指示を待つ。
上半身を左右に軽くねじれ。肉と骨を意識しながらな。
うん。

 手をぶらぶらさせたまま、右に左に、体をひねる。

 腕やお腹の筋がひっぱられ伸びるのを感じつつ。

いいぞ。ちゃんと体を把握しろ。押しのける空気や、血液の流れも感じられるように。
 難しい注文だけど、とりあえず言われた通りに、体をふる。
タチは、いつも意識しながら戦ってるの?
戦闘中は考えん。意識せずとも、それこそ「手足の様に」動かせなければ話にならない。

 目を閉じたまま体をブラブラ。

 要するに、私は自分の手足すらまともに動かせてなく、見えるというわけだ。
お手数かけます。
一から仕込んでやるからな。…しかしつくづく不思議な女だ。
そんなに変?
あぁ。なんと言うか…肉体が(した)しんでない。次は軽く腕を回せ。

 生まれ落ちた時から、自分の肉体と共にある人間はもっと違う感覚なのだろうか?

 私には知る由もないが、こう…もっとぴったりするものなのかも。

体を把握…体を把握…。

 小さく、自分に言い聞かせるように呟く。

 今一番しっくりきてるのは、ズーミちゃんに返してもらった源の力。

 それと、さっきチューされた唇。

 

 そういえば、タチに抱かれている時は、ふわふわしてるけど、強烈に自分の体を感じていた。

 普通の人は、常にあんな感度なのだろうか?

 いや、さすがにそれはないよね…?それじゃその…えっちすぎるし。


 暗闇の中、意識が思いをさぐり始め、胸がキュッと締まる。

 今でも、タチの優しい温かさが私の中でうごめく。

ナナ。肉と骨を意識して体を動かすんだぞ?
 自分の中に潜り初めていた私は、タチの言葉でハッと目覚めた。
…意識してるもん。
私に嘘をつくな。ほんのり頬まで染めて…これ以上可愛い感じになったら抱くぞ?
 戦力になりたいと言ったのは私、指導の最中だという事を忘れて何を思い出してたのか…。
…ごめんなさい。
先生とつけろ。

 …まぁ。タチにとっては、遊び半分のお勉強な気もするけど。

 それでも、私にはいくらでも学ぶことがある。

 足しにはならないまでも、足を引っ張らない程度に体を動かしたい。


 なのに、色ボケかました私が悪い。

ごめんなさい先生。
だめだ!!!たまらん!!!

 わかっていたような、いないような。

 集中できてなかったことを反省する、私の気持ちは本当だけど、それがまた彼女には「美味しかった」ようで。

可愛い!撫でまわしたくなる!!
せんせー…もう、撫でまわしてます。
すべすべの背中だな!!

ギュッ!

 きつく抱き締められ、露出した背中を触られる。

 やっぱりわかるのは、自分で体を動かしている時より、肉体を確かめられるという事。

ナナは悪い子だ…!私をこんなにも――
まてまてまて!!!

 タチが私を地面に押し倒し、上の服をめくりあげようとした瞬間。

 お鍋の煮込みあがりを、じーっと見ていたストレの声が挟まった。

襲撃者のタメの訓練なはずだろう!?
そうだが?
黒衣の男はそんな襲い方しない!!なんの訓練にもならん!

 いっつも忘れられるストレの、いっつもまっとうなご指摘。

 ごめん。今回は気付いていたんだよ?私たちのやりとりにかかわらないよう、お鍋だけを見つめてたこと…。

まだ基礎の基礎を体に教え込む段階だ!個別対策など先の先!!
ならその手はなんだ!!どんな基礎だ!!!
 私の服をまくりあげるタチの腕を、ビシリと指さすストレ。
…だから教え込んでるのだ。
なにを!?
性を!!!
ほらな!!!

 とりあえず。とりあえず言い合いするのはいいのだけど、服まくり上げたままはやめて欲しい。

 さりげなく引き下げようとするも、タチの手はまんじりとも動かない。


 ごめんなさい。ストレさんに見えてます。恥ずかしいです。

チビ様もちゃんと怒らないとダメです…!こいつはいくらでも調子に乗る種族です!!

 うん。知ってる。

 グイっとこっちを見た以上、今更目を反らせないんだろうけど、顔を真っ赤にしながら訴えかけるストレ。

 恥ずかしいのは、丸見えの私だからね?

ごめん。。。でも先生のこと嫌いじゃないから。
 恥ずかしさ増し増しで、乗ったまま行く私。
たまらん!!!それに減るもんでもない…いや、増している!!キズナ的なものが!だろうナナよ!?
…はい。先生。

 だってもう…上脱がされてるし。

 今更冷静につっこんだ所で、客観視があぶりだす間抜けな姿が、自身を殺すだけだし…。

毒されてる!!!

 一番まともで、まっとうなご指摘。

 でもそれが、あられもない姿の私を串刺しにして、抵抗力を奪う…。


 今日一番の脱力である。

 まさか…これがタチ先生の教え…!


フル族の元を離れてからというもの…!ちゅっちゅ、ちゅっちゅちゅと!見境もなく唇を重ねて…!!いけません!!!

 悲しい現実逃避に浸るしかない私を置いて、ストレは激しく責め立てる。

 だって…求められるの嫌じゃないんだもん…。一緒にいると安心するし。

気持ちが良いのだ!!なにを自制する必要がある!
王子のみならず、私の新たな主までたぶらかすとは…!ゆるせん!
ブン!

 ストレの槍が、タチのいた場所で空を切る。

おい。ナナに当たったらどうする!
私の腕は、そんな(なまく)らではない…!っというか!避けるついでに揉みしだくな!!
 槍の一薙ぎを避けるため、私を抱きかかえ転がったタチのお手ては、いつもの位置。
なつかしいな…出会いはズーミの攻撃を避けるついでに触れた時だ…。
ズーミちゃん…元気にしてるかな?せんせー。
 もうここまで来たら、最後まで乗っかり切る。
今頃、もちもちでも頬ぼってるさ。
いいな…私も食べたい。

 言われるとあの甘くもっちりとした触感が口に広がる。

 だめだ、お腹がなりそう。夕飯前だし。

チュ。
これで我慢しろ。
きえぇえええええええ!!!!!主をかえせぇええええええ!!!

 銀髪の追跡者が奇声を上げて槍をつく。全力で、命を取りに来るヤツを。

 とっても楽しそうに私を抱えて、逃げ回るタチ。

(もう…とっくに煮れただろうな…。)

きゅぅ~。

 

 上半身裸で抱きかかえられ、仲間に追い回されてお腹を鳴らす私。

 もう意味が分からないが、受け入れるしかない。

 きっとこれも人生なのだろう。

 

 でも本当は、みっともなくて、はしたなくても、ちょっと。少し。楽しめている自分にびっくりする。

 これは間違いなく、タチと出会ったせいだ。  

 こういうのでも、いいのかもしれない。


 神として、致命的にダメな気はするけど。

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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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