第66話 タチの剣。

文字数 4,032文字

産まれた時から副産物。光を作った道理で「出来てしまった。」だけの存在…。そりゃ全てを憎んで恨んだって不思議はないだろう?

 影の化身ヤウが表れてから、場の空気は一変した。

 圧倒的な力で場を支配していたイトラの輝きがくすぶり、空も厚く黒い雲が覆う。

やっとコイツがオレの所まで降りて、遊んでくれてんだ。楽しみをすぐに奪おうとするなよ。

 ヤウは、イトラと向かい合っているが、私の味方ではなかった。

 敵の敵は、という奴である。

地水火風の化身と違い、この地上以外もあなたには視えているでしょう。神の消えた世界の現状が。
当然だ。だが解釈が違う。神はここにいる、馬鹿で愚かで、自ら降りて来たうつけ者がな。

 光の化身イトラにとって、唯一と言える対等な存在。

 二人は互いの力を(うかが)うように言葉を交わす。

そんなもの神ではない。
違うね。元々大したもんじゃなかったってだけだ。だってのに、テメーが神の代わりを気取ってふんぞり返るのは許せねぇ。
力ある者の役目です。
なら、つぇーから好き勝手しますって言えや。
あなたと同じ品性にしないで頂きたい。

バチバチバチ!!

 二人が言葉をぶつけるたびに、黒い雲から稲妻が落ちた。

 決して交わらぬ、光と影の関係を物語る様に。

そもそものデキ違うんだよ。お前らは「願い」や「信仰」で地上に干渉してきた。オレは「妬み」「嫉み」で飯を食う。
そうなったのは、あなたが選んだからでしょう。
そうさ。俺は自ら選んでこうなった。立派だろう?俺は人を恐れで煽り、魔物を産み。お前らは道徳で導き、信者を作る。
(…)
人などという、出来損ないの生命…生み出なければ良かったのだ。
それを俺に言うのかよ。
 大きく一つ。音もなく輝く稲妻が二人の間に線を引く。
おい。悪魔。味方につくで良いんだな?
 身もふたもない言葉で、タチがヤウに問いかける。
相変わらず意気が良いな。オレはお前と同じ、血や暴力、暗いものが好物なんだよ。
一緒にするな。根暗なヤツも確かに好きだが、元気で明るいモノだって美味しく食べる。ナナとかな。

 口元の血を拭うでもなく、タチは私を引き寄せてキスをした。

 打ち付けられたダメージはもう回復したようだ。

わかった、わかった。お前は雑食だったな。…だが調子にのるとまとめてぶち殺すぞ。
ま…まって!えっと…初めましてというか、久しぶり…?というか???

 ヤウとタチの間にまで、ひりついた空気が流れ始めたのを感じ、慌てて私は口をはさむ。

 今でも、本心は誰とも敵対したくはない。

 

 まして、こんな場面でヤウまで敵に回してしまったら、完全になす(すべ)がなくなる。

まぁ…今のアンタじゃ覚えてないだろうな。なにせ、遥か昔に別れた存在だ。安心しろよ、あんたも気に食わねーが、イトラに統治される方が尊厳に関わる。
えっと…それはありがたいんだけど、もし、ヤウがイトラと力を合わせて問題をどうにかできるなら――
わきまえろよ。元に戻る事なんで二度とねーんだ。あんたが神をやめたその時から。
…ごめんなさい。

おい。ナナを責めるな。斬るぞ。

 黙ってうつ向いた私をかばって、タチがヤウを睨みつける。
別に責めちゃね~よ。むしろ俺は歓迎してるんだ。…ただ今のソイツには俺達みたいに視るコトも、知るコトも、できねーんだ。まして救うコトなんてな。黙って状況の中で足掻いてろ。
(彼の言う通りなのは私にだってわかっている…私にできる事なんて何もない。)
構いません。今この場で、全員粛清しましょう。
テメーだってオレと同じ「程度」だっていい加減思い知れよ!

パチン。

 ヤウが指を鳴らすと、タチの背中にも黒い羽根が生える。

 ヤウの手には黒い大鎌。それが彼の武器なのだろう。


こっちの都合だ、羽はタダで力を貸してやる。なにせ相性が悪い相手だからな。
礼は言わん!

 ヤウが加わり、全力の二回戦が始まった。

 

 白と黒。

 空間がちぎれるような、衝突が起きる。

世界が一つだった頃…調和のとれた美しい世界!それが戻らぬとしても、変わり果てる前に終わらせる!
乱れて、壊れて、ごちゃついたほうが楽しいだろうが!!

 ヤウが大きく鎌で薙ぎると、空が千切れ、血のような赤い飛沫が散る。

 空の流した赤が地面におちると、その場の土も、草も赤色に染まった。

地上でふる技ではなかろう!

 イトラが輝く翼をはためかせると、開いた空が繋がり、赤く染まった色が戻る。

 二人の攻撃は、世界の形を変える強さを持っていた。


パキン!

 間を抜くように、黒い影が高速でイトラに斬りかかる。

お前たちだけで決をきめるな!!

 タチがヤウから借りた羽を使い、神殺しの剣を手にして二人の戦いに割って入った。

 だが、羽がもたらした速度に体はついてこられて無いようで、四肢のいたるところから、血飛沫が上がる。

 

 移動しているだけで、負傷を負っている状態だ。

 それを、自慢の回復力で誤魔化している。

タチ!!!無茶だよ!!!
私は戦わなければならんのだ!!!ナナを否定するようなヤツを野放しにしない!!!この!私が!!!

 人には無茶をするなと良く言うのに、自分は平気で無理をするタチ。

 羽のおかげで光と影の戦いについていけてはいるが、灰色の「神殺し」では攻撃を当てれていても、ダメージがない。

どうした…!神殺し!
二度も言わせるな愚か者!ソレは神に向けられた増悪だ!!

 イトラが神殺しの剣を掴み、力を込める。

 不協和音を奏でながら、灰色の刃にヒビが走った。


 そう神殺しの剣は、私に向けられ練り固められた嘆きの剣。

 光の化身イトラに向かって攻撃をしかけても、ただの鋼の剣と変わりはしない。

ちがう!ちがうぞ!!迷っているだけだろう!お前らの憎しみは、かつての神などに向かうべき量じゃない!不条理に!理不尽に嘆いた情熱だ!!今更ナナなど斬って報わるものか!!私に続け!私に振るわせろ!!私に使われろ!!!迷うな!!

 タチが吠え、握りを強めたその時。

 神殺しの剣は、イトラの拳によって、崩れ落ちたかのように見えた。

何故だ!?
 驚愕するイトラの拳は、光の泡になり消えてなくなる。
そうだ…!それでいい!私と出会ったのだ!いつまでも神殺しでどうする!!
 タチの握った神殺しの剣、その灰色だった刃は、タチの流す血液と同じく、真っ赤な刀身に色変わりしていた。
相変わらずでたらめな奴だな。腐った奴の扱いが上手い。

 戸惑うイトラの隙を見逃さず、ヤウは楽しそうに鎌で薙いだ。

 空間をも斬る攻撃で、イトラの体から大量の光の泡が溢れて消える。

調子に乗るな!!

 イトラの体が大きく輝き、無数の光の(つぶて)がヤウの体に打ち込まれた。

 まともに浴びた攻撃で、ヤウの体に大量の穴が空く。

 だが、彼は笑っていた。今の状況が楽しくてたまらないかの様に。

私はいつでも絶好調だ!!!ナナさえ居ればな!!

 タチは神殺しの剣…いや、「タチの剣」を手にして、光り輝く化身と打ち合う。

 今しがた手に入れたばかりの、真っ黒な翼を広げて。

 重ねるたびに激しく、速くなる攻防を、何度も、何度も、見せつけるように。

 

 そんな白熱していく戦いを、私はただ見守っている。

 一人の人間として。

ナナ…。歯がゆかろうが、そんな顔で居ちゃいかんよ。人になれたことを喜べたお主が。

 私の横には、いつのまにかズーミちゃんが寄り添っていた。

 気付かぬうちに震えていた、私の手を握りしめて…。

ほれ。これを貸してやる。力の使い方はできとるようじゃしな。

 そう言ったズーミちゃんが両手を重ね、体を通して青い光を送り込んできた。

 源の力。

 ズーミちゃんに残された、残りのもう一つだ。

…ズーミちゃん。
その力を使って混じってこい。
そうですね。せっかく私達に興味を持ってくださったのです。あなたの意志が見ていたい。

 ひとつの優しい風と共に、ナビが現れズーミちゃんに続いて私の手を取った。

 体を通して流れて来たモノは、同じく源の力。

 

 かつては同じはずだった、今やまったくもって違う「色」をした、化身の化身たる所以(ゆえん)

ナビまで…!
元より、私とズーミは争い向きではありません。あの次元までいった戦いでは、個々に力を発揮しても影響力が弱すぎます。

 ナビは、ぶつかりあうたび世界を揺らす戦いを、遠い出来事のように見上げる。

 地水火風よりもっと前に存在した、光と影の戦い。

 それに加わるには、力が必要だ。その権利を二人が、私に渡してくれた。

おぬしなら、二つの源も扱えよう。ちゃんと返せよ?わらわだって死ぬつもりはないからの。
うん!!絶対に返す!…ありがとう。

 私の体の中に返った二つの源。

 青の色が付いた源が二つ。右の手に留まり。

 緑の色が付いた源が一つ。左の手に宿った。

 

 優しい。と感じる。

 

 確かに元をたどれば私の与えたモノだろうけど、もうとっくに彼女達の一部になっていた。

 35憶年前ぐらいに生み出され、それぞれが育み、見守る大陸と共に変化した化身。そして「源」。

 

 まったく違う色のついた青と緑が、互いを尊重し、傷付けぬように私の中で融和する。


 二つの色が互いの積み重ねを尊重し、私の体に気遣い、その「座り位置」を決めた時。

 私の体に変化が起きた。

私とズーミからの影響ですね。なんか少し感動しちゃいます。

 ナビが微笑みながら、私の髪を一束すくう。

 少し伸びた、左側の緑色の髪を。

おいしい「もちもち」を一緒に食おうな。アルケーに戻る頃にはきっと、新商品も並んでおるさ。

 行ってこい。っとズーミちゃんが髪を揺らす。

 私の右側と同じ、青色の髪を。

うん!!もちもちだ!!!

 受け取った絶大な力が、身にまとっていたユニちゃんの服を破き、新たな服を作り出し体を覆う。

 

 ズーミちゃんの体と同じ、プニプニとした感触の青い衣裳。

 ナビの様に、自由に空を舞うための羽を背に生やし。


 少し伸び、青と緑の二色になった髪を広げ、私は光と影の化身の戦い。

 

 そして、愛するタチを助けるために、飛び立った。

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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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