第12話 そうだ、聖地にゆこう。

文字数 2,548文字

 ズーミのお家で一夜を過ごし、地上へと戻る。

 水中では拝むことのできない日の光が眩しい。

おう、ズーミちゃん昨日はありがとな!

 荒れた土を整えていたおじさんが、こちらに手を振る。

 つい半日前に戦場だった場所を十数人の人間がお手入れしていた。

めげないものだ。

 タチのいう通り。既にお店を再開している所がちらほらある。

 一晩ゆっくり休んだ(タチの夜這いを回避しながら)私たちも復興のお手伝いしようと戻ったのだが…。


お疲れ様ズーミちゃんとねーちゃん達!
ありがとね~

 どこも人では足りている用な上、ちょっとした有名人になっていた。

 それはそうか、あんな大立ち回りしてたわけだし。

 

おぉ!魔物を倒してくれたあんちゃん!

 どうやら、悪いモンスターを退治した一行という認識らしい。

 まだ、顔に包帯を巻いているのに壊されたお店の修理をしている。


屋根の修理か?手伝ってやろう!
じゃーちょっくら頼もうかな。
 ズーミが水の力を使い、おじさんを支えるように高所へ…。
って。正体ばらしたの!?

 そういえば、先ほどから掛けられる声も変だった。

 私とタチはじょーちゃんやねーちゃんなのに、ズーミは名前で呼ばれている。


というかとっくにバレとったみたいじゃ。
 気にする風でもなく補助を続ける。
変なスライムだと思ってたんだよ。服着て何度もウチのもちもち買ってくんだから。
ギルガの作るお菓子は美味しいからの。
あたりめーだ!早く店再開して食わせてやるからなズーミ。

 だいぶ前から気付かれてたようで…。

 一晩明けたら互いを名前で呼ぶ中になっている。

 というか、このおじさんもちもち殺しの店主さんだったのか。



怖くなかったのか?
 タチが倒れていた旗を地面に差し言う。

 幻のもちもち殺し!見た見たこの旗だ。

人のフリしてまで、もちもち並んで買うような奴だからな。極悪にちげぇね!
(顔覚えられるぐらい、通ってたんだろうな…)
わらわ、この地の化身じゃっていっておろう!
水の化身でも、チビっ子スライムでも構やしねぇーよ。足しげくウチに通ってくれて、魔物を倒してくれたんだからよ。

 この世界には色んな生物がいる。

 人間が呼ぶ魔物というカテゴリーは「動物の中で人に害を及ぼすもの」の総称だ。

 

 といはいえ、魔物と呼ばれていても、人間と共に生活し利用されたりするものもいる。

 馬や牛などと同じ感じで。

…いつも、おまけつけてもらったしの。
お得意様には、ちゃんとサービスしねーとな!…なんだズーミ泣いてんのか?
ないとらん…!ないとらんもん!ただちゃんと、戦ってよかったなって…!

 まるで、微笑ましい親子の日曜大工である。

 やりとりをしながらも、みんなで屋台を組み立てていく。

どうやら、昨日の時点で能力を使ったようだな。

 タチの指さす先には、昨日壊されて修復不可能な瓦礫が山となって積まれていた。

 確かに、人間の力だけでこんなに早く運べまい。

 

 きっとズーミが水でまとめて運んだのだ。

 それらしき濃い色の土痕が残っている。


 既にバレていたので、全力で手伝ったのだろう。

 それがみんなのズーミちゃん呼びの理由か。


よし。とりあえず今できるコトはこんなもんだ。
 屋根の布を張り直したおっちゃんが、ズーミの水玉にのり降りてきた。
…ほんとお騒がせしました。ごめんなさい。

 タチやズーミとは違い、私は謝らなくちゃならない。

 だって、土の化身の行動は私…神様を思ってのコトだろうから。


なんでじょーちゃんに謝られるんだ?
(他の人にわかるわけがない。どうしたらいいんだろう?実は私は神で…って説明するべき…?でも、でも…。)
お主。人の身ながら源に触れたり、隠し事もあるようじゃが…良くやっとったよ。
(たぶんズーミなら信じてくれる。…私が神だって。)
うつ向き苦い顔をする私の腰が抱き寄せられる。
ナナ。私は今お前が好きだ。何か知らんが気に病むな。
(なんで、私が慰められているのだろう。事情も過去も聞かれることなく…。)
決めた!

 戻ろう。神様に。

 今の私ではなにもできないし、なにも見えない。

 

 約束の地パンテオン。

 地上で天に最も近い場所。そこに戻れば私は神に戻れる。私の聖地。


 六百年ほどの短い人生。決意を胸にこれで終わりにしよう。

何を決めたんだ?
私パンテオンに向かう!
 タチの顔を真っすぐ向き答える。
パンテオン…?パンテ教だろう?
聖地の名前がパンテオン!空中に浮かぶ約束の地。

 神殺しの女が、聖地の名前をしらないとは。

 人々が私を想う、信仰の心が集う場所。

 私が地上に降りた、繋がりの地なのに。

 

空中に浮かぶ…?地上の中心[ケサ]が聖地の場所だろう?
(…?地上の中心??)


確か空中に浮かぶナンタラは、古いほうの聖地じゃな。

 我が眷属。

 水の化身まで、不勉強な事を。

 そんなだからこの辺りは信仰者が少ないわけか!


俺の親戚も熱心なパンテ教でな、一人知り合いがケサに向かったよ。もう十年前か…生きてると良いが。
 もちもち殺しのおじさんまで…。
みなさん。神と言えば…神ですよね?
基本パンテ教の神をさすだろうな。
 タチの答えとおじさんのうなずき。

 当然といった態度のズーミにちょっと安心する。

パンテの聖地といえば?
ケサだろう。私は最終的にそこへ向かうつもりだぞ。神を殺しに。
 即答のタチ。

 神様とか興味ないからなーというおじさん。

四百年ちょっとまえじゃったかのう…お引越しなされたはずじゃよ?わらわお呼ばれしとらんけど。
(神代理!光の化身イトラ…!私のしらないうちに何かやってません?!)

 ただそこにあった。

 たぶん時間で計るなら百三十億年まえぐらい。そう思った。


 寂しくなって光あれと、イトラを生んだのが四十億年前。

 ともない影の化身ヤウも生まれた。彼は魔物を産み、悪魔と名乗っている。


 天ができ地が広がる。


 三十五億年前ぐらいに地水火風の化身が生まれ。

 地上を豊かに、それぞれが変化させる。好きに勝手に。

 

 二十万年前ぐらいに人類が私に興味を持ち、二千年前に聖地を作ってくれた。


 私を想い。私に願い。

 「聖地パンテオン」人と神をつなぐ門となり私はやがて受肉した…。


(たった。たった。六百年ほど遊んでいるうちに…!)
 短い人の生。

 ほんと、人の感覚じゃ何が起こっているのかさっぱりわからない。

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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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