第12話 そうだ、聖地にゆこう。
文字数 2,548文字
ズーミのお家で一夜を過ごし、地上へと戻る。
水中では拝むことのできない日の光が眩しい。
荒れた土を整えていたおじさんが、こちらに手を振る。
つい半日前に戦場だった場所を十数人の人間がお手入れしていた。
タチのいう通り。既にお店を再開している所がちらほらある。
一晩ゆっくり休んだ(タチの夜這いを回避しながら)私たちも復興のお手伝いしようと戻ったのだが…。
どこも人では足りている用な上、ちょっとした有名人になっていた。
それはそうか、あんな大立ち回りしてたわけだし。
どうやら、悪いモンスターを退治した一行という認識らしい。
まだ、顔に包帯を巻いているのに壊されたお店の修理をしている。
そういえば、先ほどから掛けられる声も変だった。
私とタチはじょーちゃんやねーちゃんなのに、ズーミは名前で呼ばれている。
だいぶ前から気付かれてたようで…。
一晩明けたら互いを名前で呼ぶ中になっている。
というか、このおじさんもちもち殺しの店主さんだったのか。
幻のもちもち殺し!見た見たこの旗だ。
この世界には色んな生物がいる。
人間が呼ぶ魔物というカテゴリーは「動物の中で人に害を及ぼすもの」の総称だ。
といはいえ、魔物と呼ばれていても、人間と共に生活し利用されたりするものもいる。
馬や牛などと同じ感じで。
まるで、微笑ましい親子の日曜大工である。
やりとりをしながらも、みんなで屋台を組み立てていく。
タチの指さす先には、昨日壊されて修復不可能な瓦礫が山となって積まれていた。
確かに、人間の力だけでこんなに早く運べまい。
きっとズーミが水でまとめて運んだのだ。
それらしき濃い色の土痕が残っている。
既にバレていたので、全力で手伝ったのだろう。
それがみんなのズーミちゃん呼びの理由か。
タチやズーミとは違い、私は謝らなくちゃならない。
だって、土の化身の行動は私…神様を思ってのコトだろうから。
戻ろう。神様に。
今の私ではなにもできないし、なにも見えない。
約束の地パンテオン。
地上で天に最も近い場所。そこに戻れば私は神に戻れる。私の聖地。
六百年ほどの短い人生。決意を胸にこれで終わりにしよう。
神殺しの女が、聖地の名前をしらないとは。
人々が私を想う、信仰の心が集う場所。
私が地上に降りた、繋がりの地なのに。
我が眷属。
水の化身まで、不勉強な事を。
そんなだからこの辺りは信仰者が少ないわけか!
当然といった態度のズーミにちょっと安心する。
神様とか興味ないからなーというおじさん。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk/3c6a1f00b6fddd53dbbcb4582f802173.jpg)
ただそこにあった。
たぶん時間で計るなら百三十億年まえぐらい。そう思った。
寂しくなって光あれと、イトラを生んだのが四十億年前。
ともない影の化身ヤウも生まれた。彼は魔物を産み、悪魔と名乗っている。
天ができ地が広がる。
三十五億年前ぐらいに地水火風の化身が生まれ。
地上を豊かに、それぞれが変化させる。好きに勝手に。
二十万年前ぐらいに人類が私に興味を持ち、二千年前に聖地を作ってくれた。
私を想い。私に願い。
「聖地パンテオン」人と神をつなぐ門となり私はやがて受肉した…。
ほんと、人の感覚じゃ何が起こっているのかさっぱりわからない。