第19話 寝る!
文字数 1,413文字
ピチョンの街について半日。
消耗品の補充と、馬車席の予約であっという間に時が過ぎた。
着いて始めに取った宿に戻ると、もう夜中。
今後の予定を確認する私と、二部屋取ったことをまだ不満がるタチ。
私の部屋で旅の荷造りをしている。
そうお金は多少あるのだ、前回の人生で稼いだ分が。
前回、私は水の大陸南端、ウォタの村で調合師をやっていた。
ずっと引きこもって、お肌に良い液体やら、栄養価の高い錠剤やらを調合して生活していた。
作った品は大人気。みんなの喜ぶ姿やお礼の言葉が嬉しすぎて、ずっとずーっとお家で作業していた。
日に当たらない、運動しない毎日で、転生して十年たたずに不摂生で死んだ。
その時貯めこんだお金を、今回最初に手に入れてある。
人間の生活でお金って大事なの学んだからね!才も能も無いと特に。
スミナナ同盟敗北の歴史である。
ちょっとタチの扱いにもなれてきた。余り真剣に受け止めちゃいけないのだ。
抵抗できないほど強い拘束力だが、痛くも苦しくもないのが不思議なところ。

沢山言いたい文句が、私の口から出る前に眠気がじんわりと体中に広がる。
疲れた体に久しぶりのふかふかベッド。
なんでか安心感のあるタチの二の腕。
顔に押し当てられた、けしからない胸からとってもいい匂いがする…。
あたたかい。やわらかい。ここちよい。
抵抗しようとする気持ちすら、私の根っこから抜け落ちていた。
目の前には、満足げにほほ笑むタチの笑顔。
当然。窓からはお天道様がのぞいていた。