第71話 いったん合流。

文字数 1,958文字

 ポチ君とストレちゃんに合流するため、ナビのつくった雲に乗り移動していたら不思議な光景が目に留まる。

 

 泣きじゃくりながら体中に葉っぱを付けて走る知人と、それを追う犬と子供。

 私達が声をかけると、ストレはその場で崩れ落ちよりいっそう大声で泣いた。

犬だよね…?
犬じゃな。
犬ですね。
ポチ!!!
私の素直な感想に続き、同じ答えを出した2人と。


なぜか、迷わず全てを受け入れたタチ。

そんな朝日の輝く雲の上。

えっ…今のストレちゃんの説明で納得したのタチ?
するほかあるまい!!ほら、ナナも撫でてみろ!きもちーぞ!!
 完全なる犬のポチ君を抱きしめ、ご満悦のタチ。

(確かにフサフサの体を見ていると、撫でたくなる気持ちは湧くけれど…。)


 

あっ…確かにきもちー!ズーミちゃん!この子毛並みが凄く良いよ!
ZzzZzz


 私の膝枕で寝るユニちゃんが、微かに顔を左右にゆらして太ももに頬を擦る。

 

 前日の戦いで、ダッド相手に大立ち回りした反動だろう。

 輝く角から着替えを一着だした後、可愛らしい寝顔でスヤスヤと眠りに落ちたままだ。

わらわは撫でん。抜け毛が体に入る。
よしよし。お前のその笑顔を見ればわかるぞ。全力で戦ったのだな…。いい子だ!!
わん!!!
(事情をしらなければ「飼い犬を褒める主人と、喜ぶ犬。」ってだけだけど――ちょっと妬けちゃうな。)
(でもでも、相手は犬だもん。本命として、どっしり構えてれば――)
お~よしよし!しかし丸っ切り犬になるとはな…!見事な覚悟だ!好きな狂気だ!お前は駄犬などではないぞポチ!私の狂犬だ!!
わん!!
・・・
主人として何か褒美をやらねばな…そうだ!首輪を用意してやろう!よくやったぞ。
 はち切れんばかりに尻尾を振るポチ君の頭をわしゃわしゃ撫でるタチ。
私も!!私だってご褒美ほしい!首輪ほしいもん!!

 膝の上で寝るユニちゃんをズーミちゃんにあずけ「たらし」のパートナーに言い寄る。

 ただの嫉妬、哀れで惨めな小物として。

待ってくださいチビ様!!こいつは…こいつだけはやはり、よくありません!!
そうじゃぞナナ。嬉しそうに首輪を付けるお主など見とーないぞ!
でも…タチガール代表として負けるわけにいかないよ!
おぬしはたっぷりご褒美貰っとったじゃろう!何かと2人でくっついて撫で回されおって…!
それは…いつもの事だもん。特別感が足りないもん!!
すきアレばのろけるな!!

ペチン。

 ズーミちゃんのプルプルおさげが、私の頬を軽くはたいた。

素敵じゃないですか…。人の首輪を望む神…倒錯的で、ありえなくて。
ナビ様は否定に回って貰わないと困るのですじゃ~!

 大きな雲の上。

 合流を果たした仲間たちと今後の予定を立てるはずが、ごらんの有様である。

 

 実際問題、光の化身イトラは消えたけど、今後どうすれば良いのかどうすることが正しいのかは誰にもわからなかった。

はっはっは!!全部抱いて愛してやるぞ!!ほら来いナナ!!お前も撫で回してやる!!
こいつ…!こいつー!!
タチへの攻撃「脇腹つねり」を口実に、ちゃっかりくっつく私。


結構強くつねっているけど、それでもタチは嬉しそうだった。

ズーミも来い!裸タコした仲だろう!また仲良く寝ようじゃないか!
しるか!!ついてゆけんわ!!
(懐かしいな。裸タコ。ズーミちゃんと別れた最後の日――。)
はだか……タコ?
ふれんでよいわ!!
ご…ごめんなさい水の化身様!!…ところでもっと、ポチ助を戻す方法を考えるとかしなくていいのでしょうか…?
…確かにそうだよね。ポチ君のことあっさり受け入れちゃ問題あるよね?
(命をかけて戦ってくれた彼に、嫉妬とかしている場合じゃあなかった――!)
戻す必要があるか?本人は楽しそうだぞ?
わん!
しかし、この状態での楽しそうは、あてにならないだろう?なにせ犬ですし。
何を言う。ポチは私にヤラれた時から、立派に犬だったぞ?人などとっくにやめて、ワンしか言ってなかっただろう。
そう、それだ!私はポチ助がしゃべるのを聞いたのだ!けっこう長く、熱く話していたのだ!
(なんと!アチャと戦ったのは聞いたけど、ポチ君おしゃべりもしていたのか。)
それで、何を言っとったんじゃ?
…タチへの想いを…。
戦闘中に?
…はぃ。
ほらな?私の良い子の犬だろう?
わん!
何が「ほらな?」なのだ!!全部お前のせいでおかしくなるのだろう!タチ!!
私の「せい」じゃない「おかげ」だ。
わん!!

 言い合いをしながら、くっついた私の体をいじるのも欠かさないタチ。


 いつも通りだ。

まぁなんにしろじゃ。色々と確認せんとならんことが多い。そいつの存在とかの。
・・・

 ズーミちゃんが目線を送った先には、こんなしょうもないやり取りを、じっと眺めている灰色の子。


 合流し、雲の上にのってからもずっと、彼女はストレちゃんの横で、大人しく私達を観察していた。

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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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