第47話 実質泣いてない。

文字数 1,553文字

 私が崩れ落ちてから2か月経ってる…?

 私が目覚めたのは3日前なのに?


 でも確かに変化が多すぎる。

 タチとイトラが争って、ダッドとナビ…土と風が参戦した。

 たぶんここで一区切り。


 次に風の大陸各地にに現れたダッドを倒しながら、猥談を広め――。

 どう考えても3日じゃ収まらない。


 ユニちゃんがくれた、、ミルクかき氷をパクパク無心で口に運びながら出した結論。

 やっぱり。タチと別れたあの日から2か月経ってる。
わらわの耳にしたウワサ通りなら、ナビ様はタチ側についたのじゃろう。わらわの時と同じじゃ。自らの地で好き勝手されとる。ダッドはイトラ様側じゃろうな。前から繋がっておった動きをしておる…。
 同じくパクパク頬張るズーミちゃん。

 とっても美味しそうに食べてる姿が、ミルク氷より私を癒してくれる。

神犯しの女と黒衣の駄犬…あとなんじゃったかな?銀色のチビ?いやチビの泣き虫じゃったか、がウィンボスティー周辺でダッドと戦ってるはずじゃ。
(2か月…2か月も…。)


 タチもずっと心配してくれただろう。

 私と同じように、恐怖におびえながら。

 

 しかもまだ、タチは私の無事はしらない。

 私が生まれ変わるのは承知してても、最後があんな別れ方だ…。


 タチの気持ちを考えると、申し訳なくなる。

 でも、なにせあのタチだ。私基準で考えちゃいけない。

 疑うこともなく信じてるかも。私と再び会えるって。

 

 ぐるぐる考えは巡るけど、根元にある一本の芯。「タチに会いたい」という気持ちは補強された。

 だってタチは生きてる!


ぱくり。

 もう一口ミルクかき氷を口にした瞬間。広がった甘みを意識してしまい、せき止まらない感情が溢れでた。


良かった…良かったよ~。

 食べかけのかき氷を地面に落とし、ズーミちゃんの体に顔をうずめる。

 どこまでも自分本位で嫌になる感情だけど、ともかく安心した。

ちょっ…ナナ!わらわの中で泣くな!
ゴポ!ゴポゴポ!…ゴポポポポ!
 周囲には漏れない言葉を、ズーミちゃんの中で発する。
(だって…タチに会うまで、涙は流したくないんだもん…!)

 タチにだけは見せていい弱さ。自分の情けなさ。彼女と一緒の時だけのものでありたい。

 タチと居ないときは、せめてちょっとぐらい気丈で強く振舞ってたいのだ。

 恰好だけでも。


 だから、泣かない。ズーミちゃんにくっついていれば、涙だって瞳の潤い水分か、ズーミちゃんの体液かなんて境はないはず…。


 つまり、実質泣いてない!


泣いたという事実は変わらん気もするが…よいよい。好きにするのじゃ。
 一人ゴポゴポと大泣き…瞳の潤いを見き散らす私を、ズーミちゃんは優しく受け止めてくれる。
このままじゃ塩味になりそうじゃ…。お通しも食べ終わったことじゃし、収まったらご飯にするとしよう。お主もよいじゃろう?
 ズーミちゃんが私の背中をポンポン叩きつつ、ユニちゃんに話しかける。
…てぇてぇユニ。
ユニ?おぬし腹はへっておらぬのか?
えっ…えぇ!いただくユニ!既に胸いっぱいご馳走様ユニだけど…!もっと食べたいユニ!

 この二人…どうにか隔離空間に閉じ込めたいユニ…。

 そんな言葉が聞こえたような気がするが、ズーミちゃんから頭を抜いた直後の聞き違えだろう。

ナナは当然食べるじゃろう?
…うん。おなか減った。

 この3日間まともな食事をしてなかったし、そもそも喉を通らなかった。

 ズーミちゃんのお腹に顔をうすめながら、自分のお腹を鳴らす貴重な体験をするぐらい空いてる。

新・もちもち殺し…。食べたら元気が爆発するぞ?
しん!!もちもちごろし…!!!

 自慢げに口にしたズーミちゃんの魅惑の商品名、恥ずかしながら心躍らずにはいられない。


 沢山泣いたし。おなかも減ったし。

 仕方がない。


 愛するタチのもとに向かうにも、まずはお腹ごしらえです。

 

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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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