第73話 原材料。
文字数 2,702文字
次の日の朝。
ズーミちゃんの部屋で3番目に目覚めた私は、未だ幸せそうに微笑み眠るストレを
私達は実際に目にしたのだ。
「祝福」がストレちゃんだけに贈られたものではなく、行く先々の人に届けられた事実を知り、ナビの雲に乗り遠くから大きく世界を見渡そうと空中散策をした時に。
日の光を反射し、白く輝く真っ平らな「板」になった土の大陸を。
海面より少し上が全て、切り取られたようになくなっていた。
山も、川も、生き物も全部。
降り立って確認したが、そこには1つのデコボコもなく、ただ日光と私達の硬い足音を反射する床しか存在しなかった。
暴れまわったダッドによって被害を受けた人だって多い。)
(でも、起こってしまったことを…変えられないことを除けば…もしかしたら。
この先は、良くなるのかもしれない。)
ズーミちゃんの言葉は身にしみる。
こんな姿をしているから彼女達程じゃ無いとはいえ、私も贈られなかったモノだ。
今や、何にも無しのナナから、持たざるものナナに変わってしまった。
みんなと旅した一年、その後半はあまり人里に立ち寄らなかった理由はそこにもあった。
祝福が仕えていないこと、それは怪しい存在と
皆が祝福に馴染めば馴染むほど。
そのぶつかり交わる乱れたザワザワをどうにかできているのは、抱きつき撫で回している誰かさんのおかげ。
元神という罪を打ち消してくれる、最強の変態。
相変わらずの人読みでの返答。タチじゃなくても分かるぐらい思いつめた表情だったろうけど。
今、私の身の丈はどんなもんなのだろう?
でれぐらいまでが私の責任で、どれぐらいまでがセイなんだろう?
そんな悩みもタチの言葉と体を感じると、それだけで私は全てを肯定しちゃいそうになる。
ズーミちゃんがまだ夢の中にいるストレとユニちゃんのお尻を叩く。
みな、それぞれ部屋をでる準備をし、ユニちゃんは光る角から私に着せる新しいお洋服を引っ張り出す。
部屋の隅で着替える私に、当然タチが着いてくる。
わかっている。わかっているのだ。私は、今も変わらずどうしょうもない存在だった。
本当に私が恐れている事は1つ。
世界の行く末でも、祝福や人々の今後でもない。
だってこの一年そんな事を考え思い悩むのは、ほんの少しの間だけ。
普段はただただ日々と世界と肉体を味わって楽しんでいた。
綺麗な景色も美味しい食べ物も、心砕かれるほど愛しかったし、わびしい光景も不味い食べ物も、味わう心持ちを持てていた。
もう、ダメなのだ。
私はタチを知ったから。
褒められた恋でも、まっとうな愛でもない、元神を慰める存在との関係。
他の何と変えようとも共に居たい…そう願っているのだから。
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