第41話 すまん。やりすぎた。

文字数 4,254文字

私が神なの!!
 私の一言で、つばぜり合っていた二人が、弾けるように距離をとる。
えっ!?

 一際は大きなリアクションをとったのはタチだった。

 黒衣の男の方はジロリと私に視線を向けるだけ。

…えっ?
 もう一度、目を丸々と広げたタチが私を見つめる。
ご…ごめん。ちゃんと言わなきゃって思ってたんだけど…その…!
…え?

 タチが混乱している…!珍しい一面を見られてちょっと可愛――だめだ!

 今はそういう時じゃない!

タチの優しさに甘えてた…といいますか、うすうす気づいてるのかな?とか思ったり、してたりしたり…?
い…いや。言いにくい事や、隠し事があるのはもちろんわかっていたが…。
 顔から緊張が抜け、開いた口がふさがってないタチさん。
ごめんなさい!!嫌われたくなくて隠してました!!
 瓦礫の上、土下座するしかない私。本当に申し訳ない。
実は好きな男がいる…夜のプレイに不満がある…本命はズーミとデキていた。だと思ってたのだが…
ないよ!?そんなわけ!?

 色恋…というか、性の方向でしか思考をもたないのだろうか?

 なんかもっと深~いところで、読み解かれていると思っていたんだけど…。

しかし…!水の力を使っているし、コソコソ二人で密談していたしだな…私より先にスライムとネンゴロ――
ありません!!ズーミちゃんは親友!神殺しを奪おうとして作戦会議してたの!痛いのイヤだから!

 親友というか眷属(けんぞく)にあたるんだけど。

 今の私にその実感はないし、彼女も同じ気持ちだろう。


 ただの親友ってやつだ。

ちょっと悔しい気持ちをバネにして、嫉妬心を胸に燃え上がっていた夜もあるのだぞ!?
知りません!勝手な思い込み!
私の湧き上がる嫉妬心はなんだったのいうのだ!?たぶん初めてだぞ!!
勘違いだってば!っていうかタチだって「全部知ってるぞ。」みたいな雰囲気だしてたのに何それ!!私が神様なの!

 やっと言えた。ずっと隠してきた事実を。

 それでもタチはタチのまま、私と話をしてくれることに感謝しちゃう。

あ…あれ?こういう雰囲気なんですか?

 息を切らせて、駆け付けてくれたストレが、想像したであろう場の空気との落差に戸惑う。


 あなたが正しいけど。

どうだっていいんだよ!!
 もう一人、正しい空気のままを保っていた男が声を荒げた。
奴が神だろうが、あんたが神だろうが、俺は思い知らされてんだよ、何を与えられても、クズはクズだって。
 男が苛立たし気に剣を一振りすると、どうにか形を成していた小屋は、完全に瓦礫(がれき)の山となった。
なぜ、それほどの魂の叫びを発せているのに、誰かのいいなりでいる?
役割を果たす以外に、オレに何がある…。

 黒衣の男は、明確にタチを狙って攻撃をしかける。

 今までは私が目的で、タチもストレも障害でしかない扱いだったのに。

変えようのないほど、お前はお前だ心配するな。
煽ってるんだよなぁ!?恵まれて産まれ直しても変わらなかったオレを!
いったい誰の基準で苦しんでいる?魂の(おもむ)くままにさせてやれ。

 会話…というより、口論をしながら剣がぶつかり合う。

 私にはもちろん、ストレにも入り込む隙がない。


 戦闘力が違い過ぎて。


魂なんてあるわきゃねーだろ!
ドン!

 男の縦ぶりで、瓦礫が吹き飛び、大地が割れた。

それほど、苦しんでおいて魂を疑うのか?
苦しみだ?快楽だ?…ただの神経の信号だ。くだらねぇ。(おく)れた奴らがッ…ムカツクぜ!!

 攻めているのは黒衣の男なのに、剣を振れば振るほど、苦しんでいるのは男の方に見える。


やはりお前はいい。私の好物だ。正直、今はそれどころじゃないがな。

 男の動きが荒くなるのにつれて、生じた隙をタチは容赦なくついた。

 水の剣が一太刀。男の腹を掠める。


ブシュ!


 前回のお返しとばかりに、繰り出したタチの反撃で、男のわき腹から血が噴き出す。

決めた。まずはてめぇーをぶっ殺す。
 血走った目がタチを睨みつけた。
それだ、私の魅力に引き寄せられて、激怒する。そこにお前がいるじゃないか。お前の魂が。
ちげーな!果たすべき役割の邪魔を消すってだけだ。一度しかころせねーのが残念だがな!

 吹き出る血もお構いなしで、乱暴に剣を振る男。

 一撃、一撃の隙をつき、刃を体に切り込ませるタチ。

何度も味わいたいと感じているのだろう!この瞬間を!!
そんな攻撃で、倒れる体じゃねーんだよ!!

 幾度もタチの剣撃を受けながらも、衰えない男の猛攻。

 斬られた傷は、次の一刀を受ける前に塞がってしまっている。

あんたも無力を思い知れ!焦りも、憎しみも、何一つ自分のモノなどこの世にないんだってな!!
くだらん!私の喜びは私だけのものだ!!

キィィン。

 

 突然。

 タチの腰で神殺しが震えだした。

そうだろう!神殺し!貴様らの憎しみも!お前だけの尊きモノだ!!
物とおしゃべりまでして、煽るんじゃねーよ!!

 抜き出された神殺しの刀身は、この場の誰よりも黒かった。


 交錯した二人の黒い斬撃は、一つは空を切り、一つは男を両断した。

 上下二つに。


ボタリ。

 斬り落ちた、男の上半身にタチが話しかける。

…すまん。やりすぎた。
…どういう脳みそしてたら…そんな言葉がでるんだよ?
殺すつもりはなかったのだが…盛り上がり過ぎた。
 タチは膝をつき、男の上半身をかかえる。
胸…でけぇな。…色々と思い出しちまうぜ…。
自慢の体だ。せめて一度抱きたかった…。わからせてやれたのに…。

 口からゴポゴポ血を溢れだし喋る、上半身だけの男。

 まっぷたつに切り分けた、相手を抱きたいという女。


 会話の内容と、見た目の状態に差がありすぎる。

くっつけたら、治ったりしないのか?

 死にかけの人に言うには、余りにも無神経な言葉に男が目を反らす。


ナナ!下半身持ってきてくれ!
えぇっ…!?

 見守るだけだった私達に、急に矢が飛んできた。

 ストレは見た目のグロテスクさで、背を向けて、涙目でオエオエしている。

 


人の命がかかっているのだぞ!
うぅ…。

 でましたよ。タチの断りずらい理不尽!

 切った張本人が何をまっとうそうに…。

 でも、とりあえず、やれることをやろうの精神で、ボッテリ崩れ落ちてる下半身をタチのほうに引きずろうとする。

ダメだ!抱えてもってこい!中身がこぼれ落ちる!
えぇ!!…気持ち悪いよ…。

 言いつつも、太もものあたりを抱えて、切り口を上にしタチのもとへ運ぶ。

 もちろん顔はそむけて。

うぅうぐッ――!!!

 そんな私の勇気ある行動を見て(見れてない)。ストレちゃんはただひたすらに自らを(おさ)えていた。(抑えられていない)

 可哀想に…助けに駆けつけてくれたのに、見せ場の一つもなく、ただただゲロゲロしている。

 

 でも戦士ならこんな場面いくらでも…ないか。

 真っ二つになった人間を繋げ直そうとする場面なんて。

 

うぅっ――…血の匂いが…。

 直視してないとは言え香りが凄い。なんかブシュブシュ空気の潰れる音もするし…。

 足元は瓦礫だらけ、転びでもしたら内臓が飛び散ってしまう…。気を付けないと…。

…おい。やめろ。いいから、遺言とかを聞けよ。

 極めてまっとうな意見が、極めて異常な姿の男から吐き出される。

 ゴポゴポ、胸下の輪切りと、口から血を吐きながら。

だめだ。隠してもわかるぞ。お前、くっつくだろう?
…チッ。
…そうなの?
 ため息ひとつ、あと内臓のナニカを上半身からボテリと落としながら、面倒くさい表情の男。
たぶんな。…だから首を落とせ。たぶんそれで死ねる。
だめだ。くっつけろナナ。
うん。

 男の言葉はおいといて、とりあえず断面を重ねてみる。

 内臓一つ落っこちたままだけど。

まてよ!何がしたいんだお前ら!
抱きたい。
  明確な答えがない私と違い、タチは完結だった。
下半身だけくれてやる…勝手にヤればいいだろ!
えっ…そんな所見たくない…。
だったら目を閉じてろよ!!つーかなんでお前が立ち会う前提なんだボケ!

 思った以上に元気な上半身さんが、私にどなりつける。


 正直、そもそも、タチが他の人と「仲良く」している所なんて見たくない。

 でも、まぁ。タチだから仕方がない気もする。


 でもでも、さすがに、下半身だけと仲良くしてるとこは…想像したくもない。

面白そうだが、私の興味があるのはお前自身だ。…おおかた自殺を試みて、自分の再生力は知っているのだろう?
…死に切る根性はなかったけどな。
魂を信じぬお前がか。笑えるな。

 戦闘中と変わらず、会話を続ける二人。

 私には理解できない感覚だ。


 とりあえず、言われた通り上半身につながる様に、下半身を持つ。

あの…いつまで?
…五分もすれば、つながる。

 五分…かかえてなきゃいけないのか…。

 重ねた切れ目部分からピチピチ音がするのが怖い。

意味がわからない。あんた達を殺すのが俺の役割だぞ?
お前は、まだ私を殺したいのか?その意志があるのか?そう言われたからといって。

 男とタチが視線を交えていた。

 私はただの支え役。ちょっぴり寂しい。

 あと、私も吐きそう。

…わからない。
私は神を殺そうと思っていたが今日やめた。ナナが神らしいのでな。そんなものだ。
 タチが私の方に顔を向ける。
…そんなに簡単にいいの?
いけない理由がどこにある?私の気持ちは変わらない。ナナがなにで、どうあろうとも。

 変わらず支え役のままだけど、だいぶん嬉しい。

 でも神を殺すため、長い旅をしてきただろうにいいのだろうか?

 …良くないと困るけど。

力も才も金も女も…手にして生まれてこれなんだ…。オレはどうしたらまともになれる?
一度私にかしずき、犬となれ。まともになる必要などない。

 傲慢で、上からで、偉そうな、いつものタチ。


バタリ。

 向こうの方でストレが倒れた音がした。

 ごめんね。いっつも放っておいて。背中の一つでもさすってあげたかったんだけど…。

…いいかもな。少し時間をくれないか?謝らなきゃならないヤツがいるんだ。
思い人か?
ずっと傍にいてくれたのに、ほっぽり出したどんくさい奴が…。
好きにしろ。
 黒衣の男は。泣いていた。

 たぶん、今までしたきた色々な事をおもいだして。

沢山…殺しちまったな…オレはどうやったって…。
今はゆっくり休め。何をどうでも私に抱かれてからにしろ。

 タチは優しく男の頭を撫でた。ゆっくりゆっくり。

 その姿をみても、私に嫉妬の心や、寂しさは生まれない。

 

 不思議だけど、当然だと感じる。なにせタチだから。



 許されていいわけがない…。

 繰り返しつぶやく光の化身が送り込んだ刺客は、普通に悩み後悔するただの人間だった。

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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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