第4話 自慢された。
文字数 2,014文字
あんなにぽかぽか日和だった世界がオレンジ色にそまっている。
どのぐらい歩いただろう？とりあえず開けた野原から離れることはできた。
生い茂る木々が多少のカモフラージュになるだろう。
今更隠しても手遅れだけれども。
所で名前はなんと言うんだ？私はタチ。タチ・ユリ。よろしくな。
気にはなるが、どうせ一緒にいるのは今だけ。
どうしても必要な情報というわけでもなし、深刻な理由でもちょっと気まずいし…。
思いがけない一言に大きなリアクションをついとってしまう。
そんな私を見て凄くすご～く自慢げな顔でタチはつづけた。
わざわざ千切って投げる仕草までいれ説明してくれる。
…あれ？男も女もって言った？じゃあこの距離感の近さって…？首筋を一つ冷や汗が伝うのを感じる。
冷や汗をダラダラ垂らし、速足の私を逃すまいと回り込み進路をふさぐ変態女。
何を思ったかズボンを少し開き下腹部を見せびらかしてくる。そこには立派な契約の印が…
あぁ…！口ききたくなかったけれど、ついつい叫んでしまった…！
だって下腹部にハートマークの印って…！なんだこいつ！！
褒められたと思っているんだろうさ、この変態。だから口を聞きたくなかったのに…！
勝手に熱が上がり続けるタチ。どういう世界観で生きてるのだろうかこの生き物は？
放っておいたらこのままズボンを脱ぎそうな勢いで、印を見せびらかしてくる。
（今の私よりは年上だろうけど、いっても二十歳そこそこの小娘…！神として本気で怒ったりしちゃみっともない…）
（神には味わえぬ理不尽をたしなむ者たちよ…多様で味わい深い時の流れを生きるもの――）
一生懸命ひねり出し羅列した罵倒の言葉に、ニコニコ笑顔のタチはニコニコのまま私に顔を寄せる…。
あれ？なんか圧がある…。
とっても怖いですけれど。
鼻と鼻がコッツンしてますけれど…近くありませんか？
これが悪魔と契約したものの圧力…？
