第70話 贈り物。
文字数 2,057文字
その時、場の異変にストレが気付く。
色味の薄い肌と、くすんだ表情が不気味さをかもしだす。
状況把握ができていないストレは、周りを何度も見渡すが、人影はどこにもない。
人影は。
手には赤色の棘がある葉を持っていて、ストレの傷口に勝手に葉を当てると。
緑の葉が血を吸い赤く染まり、変わりにフチの赤い棘が緑色になった。
すると、傷口の血は
幾枚も用意された葉を使い、手際よく傷口の血を吸い固める灰色の人。
状況が理解できていないのはストレだけ。
嫌な汗が一筋、彼女の背中を伝って落ちる。
なんとなく感じていたであろう予感に、ストレは言葉を探せず呆然と座り込む。
その横では灰色の人が、変わらずストレの手当を進めていた。
柔らかく、ゆっくりと。
形取られたのは、手のひらサイズの土の化身「ダッド」だった。
消えたダットの代わりに言葉を続けたのは、灰色の人だった。
感情のなく、一定な声。
周りには、ストレの血を吸った赤い葉が均一に並べられている。
ドバァ!!!
アレた言葉を残し、爆音を
彼が去った後もしばらく、空気が空へと巻き込まれ、風は天へと流れ続けた。
ストレはゆっくりと立ち上がる。
それに合わせて灰色の者も立ち、犬も立つ。
ストレが右を向くと、2人も右を向き。
ストレが左を向くと、2人も左を向いた。
ストレがもう一度座ると、当然2人も座る。
冷静に静かな雰囲気でストレを追いかける灰色の者と、何もかもが楽しそうにベロを出して駆ける犬。
2人は全てを受け入れていた。
世界はこういうものなのだと。
先頭を走るストレだけが、何もかもを受け入れられずにい泣いていた。
