第49話 高速移動。

文字数 2,562文字

 今私は、爆速で水上を移動している。

 海の波などものともせず、ただまっすぐ。

 

 風の大陸を目指し「水の化身」と「ユニコーン」二人の水適正最強生物に抱えられながら…。 

ちょ…ちょっと待って!休憩!そろそろ休憩はさもう!
わらわはまだまだ大丈夫じゃよ?
ユニも!
 騎馬(きば)役の二人は元気いっぱい、でも上の私が疲労困憊(ひろうこんぱい)
私が…もたないです…!
ナナぽんは、乗ってるだけユニなのに?

 アルケー湖をでて川を下り、海に出てタチの元へと向かう道中。

 今のところほぼ水上移動なので、確かに私は運ばれてるだけなんだけど…。


風圧とかっ…!水飛沫とかっ…!もの凄いんだよ…!!

 一応ズーミちゃんが、防御用で水のヴェールを張ってくれている。

 しかし、速度が速度。

 海にでてからは特に手加減無しで、水をえぐるように進み、通り抜けた後は、身長の2倍以上の水柱が立ち上る。

 そんな速さで爆進していると、水のヴェールを突き抜けて水飛沫が私にぶつかるのだ。

仕方あるまい。ちと休むか。
 ズーミちゃんが手を振ると、水のヴェールが形を変えてぷよぷよの絨毯状(じゅうたんじょう)に足元に広がった。
この上で休憩するがよい。
ふぃ~。…ありがとうズーミちゃん。

 水の絨毯(じゅうたん)に体を投げると、私の体重に合わせ波を打つ。

 ひんやりとした感触と、ぷにぷにの触感が心地いい。

 でっかいズーミちゃんに寝転がっている感覚だ。

息抜きするなら、ゆったりした服に着替えるユニよ!
いいけど…体が強張(こわば)って、動かないから少し待って…。

 ユニちゃんとの約束は、一日一回だったはずなのに、何かと理由をつけて着せ替えさせようとしてくる。


 実害もないし、色んなお洋服を着るのも楽しいので好きにさせているが、今は着替える体力すらない。

 ずっと同じ体勢で力を入れていたから、体がバキバキに固まっている。

良いユニ!良いユニ!ここはズーぽんが、お着替えさせてあげるユニ!
 うきうきピョンピョン跳ねるユニちゃんに合わせて、水の絨毯がぶにょぶにょ動き、寝転がってる私の体も揺れる。


ゴロン。ゴロン。

 なんだろう体に伝わる負荷が、とっても心地よい。

なんでわらわが面倒を押し付けられるのじゃ!?着せ替えたいのはユニなんじゃから、お主がすればいいじゃろう!
ユニがやるのもご褒美だけど~。ズーぽんがナナぽん着替えさせたほうが、いっぱい嬉しいユニ!
しらんしらん。お主の趣味に付き合う義理は、わらわに無い!
うぅ~~体がカチコチで動かない…。この服体に張り付いて気持ち悪いぃ~。

 ユニちゃんが水上移動用にと私に着せてくれた服は、ゴムのような布のような不思議な素材の物で、体部分を全部覆う形をしていて、おへその部分だけ私の事情でくりぬいてもらっている。


 前世で着ていた、インナーの薄手版という感じだ。同じ物の色違いを並べられ「どれが良いユニ?」と言われ、白を選んだ。

 ユニちゃん(いわ)く、基本は紺色らしい。

ズーぽん!ナナぽんが苦しんでるユニ!お着替えさせて、体もほぐしてあげるユニよ!
ごめん…ちょっとしてもらえると嬉しいかも…。

 しかし…ユニちゃんはタチのことがとっても嫌いだけど、共に旅をしている私の感覚としては「ちょっと綺麗なタチ」

 

 似てる部分が多いと思うんだけどな…。仲良くできればいいんだけど…むしろだから無理なのかな?

 

 決定的に違うのは「参加」か「見学」かぐらいなもので。

 言ったら怒られるだろうけど。

えぇ~い!面倒じゃ!脱がせばいいのじゃろう!!

しゅるしゅる!

 ズーミちゃんの指が伸び、ぴっちり貼り付いた私と服の隙間に入り込む。

 そのまま、すぽん。と器用に服を抜き取ってくれる。


らく~…便利~…。

 うつ伏せに倒れたまま、裸でぐったりの私。

 恥ずかしさはあるけど、体を休めたとたん疲れが一気に体を覆い、動く気になれない。


 まぁ、周りは海だし、いるのはズーミちゃんとユニちゃんだけだし。

 襲われる心配もない。

 

 恥じらいもなくなっちゃったけど。

むむむ!もっとゆっくりじっくり脱がして欲しかったユニだけど…着せる方で味わうユニ!

 少し残念そうに唇をかんでから、ユニちゃんは角を輝かせ、新しい服をズーミちゃんに渡す。

 白くてふわふわでひらひらのカワイイ奴を。


 ユニちゃんの服の種類は様々だけど、今回みたいな淡くて可愛らしいお洋服を出すことが多い。

 これが子供服を最上位の「神聖」に位置付ける、ユニちゃんの好みらしい。

ほら。着せるぞナナ。
まかせた~…。
 しゅるしゅるのびたズーミちゃんの両腕が、私に巻き付き体を宙に浮かし、腕を上げ、足を広げ、次々着衣を進めてくれる。
あぁ~。もう毎日お着替えさせて欲しい…。
なにいっとるんじゃ怠け者め、今日だけ特別じゃ。
うぅ…。もっと抱きしめて、片足ずつあんよを上げたりして欲しかったユニ…。こんなタコ踊り…。
お主が自分でやれ!!

 なんだかんだ言いながらも、ズーミちゃんは私の体調を心配し、結局マッサージまでしてくれた。

 ありがとうママ。実際母親がいたらこんな感じなんだろうか?

 

 ママ…というとタチママを思い起こす。

 全然こんな感じじゃなかったな…。タチママが私のママだったら、きっと今頃蹴り殺されてる。


 とっても失礼な妄想だけど。

 小一時間お休みした後。

 「もう大丈夫出発しよう」と私は言ったが、ズーミちゃんから「大事を取ろう」とストップがかかり、今日の移動はここまでで。

 海上で夜を迎える。

夜は寝間着に着替えるユニ!今度こそゆっくりじっくり恋文を開くように丁寧に脱がすユニ!
やらんよ!
私は歓迎だよ?
なんで2対1になるんじゃ!?肌を触らせるのじゃぞ!?少しは恥ずかしがれ!
 完全に横着(おうちゃく)を覚えた私が、ユニちゃんの提案に乗っかる。
だって…ズーミちゃんならいいかなって。私のママだし。
だれがママじゃ!!!っというかお手伝いさんの扱いじゃろう!!
その関係も素敵ユニね!

 今度はズル(?)できないように、ボタンの多い服を用意したユニちゃん。

 彼女の望み通り、一つ一つ丁寧にボタンをとめて、服を着替えさせてくれるズーミちゃん。

 お着替え中に、既に口を開けて寝ている私。

 


 こんな感じの水上移動を数日続けたら。

 あっという間に風の大陸にたどり着いた。

 

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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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