第49話 高速移動。
文字数 2,562文字
今私は、爆速で水上を移動している。
海の波などものともせず、ただまっすぐ。
風の大陸を目指し「水の化身」と「ユニコーン」二人の水適正最強生物に抱えられながら…。

アルケー湖をでて川を下り、海に出てタチの元へと向かう道中。
今のところほぼ水上移動なので、確かに私は運ばれてるだけなんだけど…。
一応ズーミちゃんが、防御用で水のヴェールを張ってくれている。
しかし、速度が速度。
海にでてからは特に手加減無しで、水をえぐるように進み、通り抜けた後は、身長の2倍以上の水柱が立ち上る。
そんな速さで爆進していると、水のヴェールを突き抜けて水飛沫が私にぶつかるのだ。
水の
ひんやりとした感触と、ぷにぷにの触感が心地いい。
でっかいズーミちゃんに寝転がっている感覚だ。
ユニちゃんとの約束は、一日一回だったはずなのに、何かと理由をつけて着せ替えさせようとしてくる。
実害もないし、色んなお洋服を着るのも楽しいので好きにさせているが、今は着替える体力すらない。
ずっと同じ体勢で力を入れていたから、体がバキバキに固まっている。
ゴロン。ゴロン。
なんだろう体に伝わる負荷が、とっても心地よい。
ユニちゃんが水上移動用にと私に着せてくれた服は、ゴムのような布のような不思議な素材の物で、体部分を全部覆う形をしていて、おへその部分だけ私の事情でくりぬいてもらっている。
前世で着ていた、インナーの薄手版という感じだ。同じ物の色違いを並べられ「どれが良いユニ?」と言われ、白を選んだ。
ユニちゃん
しかし…ユニちゃんはタチのことがとっても嫌いだけど、共に旅をしている私の感覚としては「ちょっと綺麗なタチ」
似てる部分が多いと思うんだけどな…。仲良くできればいいんだけど…むしろだから無理なのかな?
決定的に違うのは「参加」か「見学」かぐらいなもので。
言ったら怒られるだろうけど。
しゅるしゅる!
ズーミちゃんの指が伸び、ぴっちり貼り付いた私と服の隙間に入り込む。
そのまま、すぽん。と器用に服を抜き取ってくれる。
うつ伏せに倒れたまま、裸でぐったりの私。
恥ずかしさはあるけど、体を休めたとたん疲れが一気に体を覆い、動く気になれない。
まぁ、周りは海だし、いるのはズーミちゃんとユニちゃんだけだし。
襲われる心配もない。
恥じらいもなくなっちゃったけど。
少し残念そうに唇をかんでから、ユニちゃんは角を輝かせ、新しい服をズーミちゃんに渡す。
白くてふわふわでひらひらのカワイイ奴を。
ユニちゃんの服の種類は様々だけど、今回みたいな淡くて可愛らしいお洋服を出すことが多い。
これが子供服を最上位の「神聖」に位置付ける、ユニちゃんの好みらしい。
なんだかんだ言いながらも、ズーミちゃんは私の体調を心配し、結局マッサージまでしてくれた。
ありがとうママ。実際母親がいたらこんな感じなんだろうか?
ママ…というとタチママを思い起こす。
全然こんな感じじゃなかったな…。タチママが私のママだったら、きっと今頃蹴り殺されてる。
とっても失礼な妄想だけど。
小一時間お休みした後。
「もう大丈夫出発しよう」と私は言ったが、ズーミちゃんから「大事を取ろう」とストップがかかり、今日の移動はここまでで。
海上で夜を迎える。
今度はズル(?)できないように、ボタンの多い服を用意したユニちゃん。
彼女の望み通り、一つ一つ丁寧にボタンをとめて、服を着替えさせてくれるズーミちゃん。
お着替え中に、既に口を開けて寝ている私。
こんな感じの水上移動を数日続けたら。
あっという間に風の大陸にたどり着いた。