第3話 ぎゅっとね!
文字数 1,103文字
ズーミの中にズップと入った両の手でギュッっと核にぎりこむ。
私の突然の行動への驚き…というより、的確に急所をつかまれたことの方がびっくりだったろう、大きなお目目が見開かれている。

ギュウウゥ人間でいうと内臓を直接握られるようなモノだ…さぞ気色が悪い感覚だろう。
ぎゅうぅぅうう。もうちょっとだけダメージを与えておかないと、すぐ元気にもどってしまうだろうから…。
可愛そうだけど…!
ズーミは人型を形成していられなくなり、ぱちゃぱちゃと弾け小さな水たまりを作り出す。
べちゃ!水の玉の方が破裂し、タチが完全に開放された。
土砂降りの雨、それも粘度の高い水に打たれた直後のような、びちょびちょで濡れ崩れ落ちているタチを抱き上げる。
だいぶ水を飲みこんでいたみたいで、げほげほと咳き込むタチさん。
意外と優しい笑顔である。弱っているからかもしれないけど。
自分の左手を見てみると確かに、抱き上げるために使用したこの腕は、彼女の胸に埋もれていた。
こっちが必至で頑張ったのに、どこに意識を割いているんだこの女!
だってあんたでかいんだから!体を支えようとしたらそんなこともあるさ!
ホントコイツ!こいつ!
恥ずかしさと腹立たしさで内臓と頬と耳を真っ赤になる。
とはいえ、せっかく助けたこの女を見殺しにもできまい、タチに肩をかしすぐにこの場を離れよう。
ズーミが元気を取り戻す前に。
残された無数の水たまりの中の一つ。
手のひらサイズに縮んたズーミは二人の背中を見送るしかなかった。