第68話 ポチ助。

文字数 1,197文字

 光の化身イトラがヤウの手により消え去る少し前。 

 「黒衣の駄犬ポチ」と「泣き顔のストレ」の別働隊は、たった2人でダットを追い詰めていた。

つ…強い。

 ナナ達と別れ、もう一箇所の「土の化身ダッド」と接敵してから、既に何度か同じ言葉をストレはつぶやいた。

 こちらに出現したダッドのサイズは、ナナ達が戦ったものよりだいぶ小さいサイズだとはいえ、攻撃の苛烈(かれつ)さも、先の見えぬ体力(体積)も驚異なことには変わらない。

 

 元・王室近衛兵(このえへい)とはいえ、少し「風の力」が使えるただの人間。

 世界の始まりの神様とか、四大陸を(つかさど)る化身とか、ストレにとっては余りにも大きな話だった。

 だが、共に戦う彼は少し違うようだ。

わん!
 目の前で黒い剣を振り回し、ほとんど一人で「土の化身」と(わた)り合う「元・黒衣の男」「現・タチの犬」を見て、ストレはもう一度同じ言葉をつぶやいた。
ポチ助、強すぎないか!?

 かつて敵側だったときより、強さが増している気がする。

 鳴き声しか発さない異様さが、妙な迫力を付け加えているせいかもしれない。


 ポチの主人に習った攻め攻めな襲撃により、ダッドの体積は少し大きな建物サイズまで減っていた。


 A:タチ[神殺し]・私[神]・ズーミ[水の化身]・ナビ[風の化身]・ユニ[意地でもBに行かなかった]

 B:ストレ[泣き虫一般人]・ポチ[心が折れたタチの犬]

(はじめは、この戦力分けに不安しかなかったのだが…一安心だな。)

(それに…向こうは「光の化身」も現れるのだろうからな…ご無事でしょうかチビ様。)

 なんとなく、ナナ達がいる方角の空を見上げたストレの目に、赤く燃える炎が見えた。

 太陽ではない、はるかに小さいが、凶悪にメラメラと燃える塊がひとつ宙に浮いていた。

雑魚どもが調子こいてんなぁ!

 人型の炎が、上から偉そうに言葉を吐き捨てる。

 

 イトラの側についた「火の化身アチャ」だ。

ポチ助!!!
 ストレの叫び声でポチも火の化身の存在に気付き、ダットを削り取る作業をやめる。
情けねぇーなダッド!たかだが人間二匹に負けてんじゃねーぞ。

 ポチが攻撃をやめたが、動かないままのダッドに優しい励ましの声をかけるアチャ。

 ゆっくりとダッドの方へと進みゆく彼から、ストレとポチは距離を取る。

ボン!
グゴ・・・ゴ・・・


 アチャがダットの横に降り立った時、爆発音が一つ。
な…なぜ?
ダセェーからだよ。こっからは俺様が遊んでやる。…そっちの男は少しデキるみたいだしな。

 アチャが、嫌らしく口元を歪め手招きをした。

 かかってこい、と。

わん!!
まてポチ助!!
 ダットとの戦いで高ぶり続けていたポチは、アチャの安い挑発に乗り、剣を構えて突っかかる。


 突然変わった戦況に、頭を冷やせと言葉を続けようとしたストレだが、ポチが彼女の言葉を聞くわけがなかった。

 なぜなら、ストレはポチの主人ではなかったから。

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登場人物紹介

[ナナ]

死んでもやり直し、同一の主観を持つ転生を繰り返している。

タチと出会い今、この瞬間、しがみ付いてでも離したくない思いを知る。

言葉の人。

「美味しいもの食べてる時が一番幸せ!」

[タチ・ユリ]

なんでもいける素敵ビッチ。

男も女も抱くし、責めも受けも味わう遊牧民の子。神を抱く女。

今を楽しむため、強靭で健康な肉体を悪魔と契約して手に入れた。

代償は寿命の半分と、子を宿す力。

肉体の人。

「うるさい。抱くぞ?」

[ズーミ]

水の化身。

化身として新米なため、のじゃ喋りで威厳を持たせようとしたりする。

人間大好き。

情の人。

[ユニコーン]

やっかい処女厨。

ナナが好き。タチが嫌い。

ナナを見守っていたくて、出会った時から追っかけをしている。

おぼれる人。

[ヒタム・ストレ]

前職をタチのせい(?)で追われ、新たな主人としてナナを追っかけている。

騎士でいたい人。

[黒衣の人(ポチ)]

増えた世界から、まっとうに転生してきた人。

奴隷を買いハーレムを築いたが虚しさを覚え、刺客としての役割を果たす。

タチは抱きたがっている。

寂しいおじさんの人。

「世の中を大切にしたいと思うわけがない、大切にされた覚えがないからな。」


[アチャ]

火の化身。

火の大陸で自らを神と呼ばせ、人を手下として使っている。

お気に入りの国に肩入れしたりもしてる。

[ナビ]

風の化身。

酒場でバイトしたりしている。

ウゴゴゴゴォ

[おばーちゃん]

「素敵じゃないの」

新機体。主人公だからね!

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