第51話 タチガール。
文字数 2,498文字
村に着いたらまず、お店が閉まる前に買い出しだ。
食料に、油、手ぬぐい、それとクシも。
買い物しながらお店の人に話も聞いたけど、ウワサを耳にしていても、今の居場所まで知ってる人がいない。
消耗品の補充も終わったし、本格的な聞き込みをしたい所だが…。
人の集まる場所といえば、やっぱり酒場。
足を運びたいけど、今の私だと店の前をウロついてるだけで叱られそうだ。
どうしたものかと、切り株に腰を掛け悩んでいたら声をかけられた。
前を通りかかったおばーちゃんが、私の横に腰かけ座り込む。
どこの村でも一人はいる、気さくに声をかけてくれる優しいご年配みたい。
性に関心を持つどうしようもないエロチビのため、向かいで野良仕事をしていたお兄さんにおばーちゃんが声をかける。
ヒッヒッヒと笑うおばーちゃんは、嬉しそうに私の顔を見た。
孫に叱られたのが嬉しいのだろうか、元気なおばーちゃんである。
私が口を開くよりさきに、返事をするおばーちゃん。
さてはおばーちゃん。私をだしに孫と話をしたいだけだな…!
可愛いおばーちゃんである。
関係のない長話が始まりそうになったその時、お兄さんがばーちゃんの背中を押し、すぐ横にある家の方へと追いやる。
どうやらここがお家だったらしい。
2人のやり取りを縮こまって見ていた私に、同意をもとめるおばーちゃん。
眉間にしわを寄せてはいるが、本気じゃない。あきらかにおばーちゃんは楽しんでいた。
負けないぐらいチャーミングでお元気だったけど。
また聞き覚えの無い、通り名である。
彼女がなにかやらかしたのだろうか?でもその場合私に確認するのはおかしいか…。
うん。間違ってない情報だ。水の大陸で流れていた盛り盛りの噂話より正しい。
神様が本当に神様を指すとは誰も思ってないようだけど。
嬉しい。少なくとも一ヶ月には、その街に元気に存在してくれている。
そう証明してくれる人が目の前に存在する。
タチガールの言葉の意味を理解して、つい声を上げてしまった私を冷ややかな目で見るお兄さん。
違うんです。本当に本物は私なんです。
今寄っているニセタチガールと違って、本当に本当のタチと愛し合った存在…それが私!
でもそれってタチガール呼びされても仕方がない気もするけど。
目指す場所に目星がついた。
ウィンボスティー。聞き覚えがある。確かストレちゃんの元いた国の王都だ。
タチが王子様に「おいた」した場所…。
そんな所いて大丈夫だろうか?
北の大陸で一番大きな国の中心地、確かに人は多いし噂も広めやすそうだけど…。
まぁ。タチが昔した事を気にして効果的な手段を避けるかと言えば…避ける気がしない。
まだ日は暮れてないが、駆け足でズーミちゃんとユニちゃんの所に戻る。
少しでも早くタチの元にたどり付くために。
だって私。タチガールだもん。
