第28話 ヒタム・ストレ
文字数 2,546文字
どっしりと安定し、揺れることのない大地に両手をつける。
なんて確かで頼もしいことでしょう。どんなに叩いてもびくともしない。
風の大陸南のフェーン港。長い船旅を終えてやっと到着した。
ピチョン港と違い質素な感じがする所だが、同じ海どなり。
潮の香りを風が運ぶ。
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タチの言う通り。海の香りが同じでも、混ざる土地の匂いでだいぶ変わる。
肩を怒らせ、大股でズカズカと女性が迫って来た。
美人だけど、顔つきに幼さが残る彼女は、鎧に身を包み、長い槍を手にしている。
どうやら戦士のようだ。
激しい温度差である。
涙目のストレがタチを睨む。
ようするに王子様の火遊びを、ストレさんが騒ぎ立てて大きくしたってこと…?
そのまま腰を落とし、槍を構えた。
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突進と合わせ、体重を乗せた突きがタチを襲う。
カシン!乾いた金属音がして、神殺しがストレの突きを反らす。
突然、戦闘が始まった。
風の大陸を目指し、長い船旅を終えた矢先に。
おいしい現地のご飯に、想像を巡らせた私を置いて。
連続して起こる金属の破裂音と、小さな火花。
タチは基本受けにまわっているようだけど、ストレの攻撃は容赦なく命を取る軌道で重ねられる。
もの凄い速さの突きから、切り払いの連撃を
タチは馴染ませるように、神殺しをクルクルと手首で回す。
ヒュォォ!
ストレの槍が風をまとう。
なるほど、あの素早い動きの秘密は、風の力を利用しているのか。
より鋭くなった攻撃を、剣で受け、足さばきで避け、タチは踊る様に
だいぶ集まった観客の前で攻撃と共にタチへの感情を披露するストレ。
軽やかなタチの動きに、拍手まであがる始末…。
たぶん、大道芸かなにかと思って見学している人もいる。
タチが言いながら、ストレの憎しみのこもった突きを上半身だけで躱し。
足を引っかけた。
ズベシ!!
勢いと体重…ついでに思いも利用されて、そのまま豪快にすっ転ぶストレ。
人間として十分すぎる動きで戦っていたと思うけど、なにせ相手は人間離れ…。
悔しそうに、地面に拳を叩きつけるストレに、戦闘意欲はもう無いようだ。
また目に涙を貯めている彼女をみると、泣き顔の似合う人だな~…と思っちゃったりする。
事情をきちんと知らない私でも、タチと同意見だ。
だって、王様蒸し返されたくないだろうし…。
待ち遠しいって。
哀れで可哀想な女戦士を一人その場に、二人は馬小屋を探すのであった…。
ずっと後ろに付いてきてたけど。