第10話 1月2日。始動。

文字数 853文字

体育館に戻ると、町会長さんが中心に移動式の黒板を使って、今日のこれからのことを話し合われていた。
僕もその話し合いの輪の中に交じる。
黒板には以下が書かれていた。

・町会長:珠洲市役所にて状況を確認
     食料、水、電気、トイレ、毛布を確認
・副会長:責任者。体育館で避難者名簿の作成
・田中さん:珠洲総合病院の状況確認
・道下さん、堂前さん:避難者の健康管理
・長井さん+α:仮設のトイレのため校庭裏に穴を掘る
・瀬戸さん+β:あるもので暖かい料理ができないか調査
・他の方:自宅で食料、毛布、水、防寒具、ガスコンロを運び出す。
     火の始末やブレーカーを落とす。
     近所に逃げ遅れた方がいないかを確認する。
     くれぐれも安全第一で!

くれぐれも安全第一で!のところは赤いペンで囲まれている。
60代後半と思える町会長さんだが、かなり強いリーダーシップで臨んでいる。
非常時で気が張り詰めている感じだ。

「+α」のところは、はるき君、ともき君に手伝って貰い、「+β」のところは、お義母さんに手伝って貰うこととした。

まだ少しだけ残っている災害時の物資から朝食を分配してから、早速各自実行に移すことになった。
朝8時を過ぎると、ようやく氷点下の気温が緩んだ感じがする。
それでも上着もなく、みんな震えながらみんな自宅の方に向かっている。

僕と隆太さんは車で三月家に向かうこととした。
レイちゃんとうちの子供たち、清恵さん、お義父さんは一旦車から降りて貰い、体育館に避難した。
底冷えする体育館に移ってもらうのは心配だったが、車で自宅の物資を運ぶ方を優先した。

全く希望の見えない闇の中で一晩を過ごしたが、やはり人間が立ち上がるためには希望が必要と感じた。
ご家族を亡くしたり、まだ行方がわからない人。
家が全壊し呆然としている人。
そんな人が大勢いるからこそ、動ける人は前を見て、一歩でも半歩でも進む必要がある。

そして僕たち夫婦には小さい子供がいる。
この子たちと無事金沢の家に帰るため、今できることをやるんだと気力が少し復活してきた。
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