第68話 3月21日。帰郷。

文字数 1,237文字

3月17日に珠洲から金沢の自宅に帰宅すると、レイちゃんから「おちょうしフォー!」面白かったね、とからかわれた。
今回柳さんがスマホで動画を撮っていて、「珠洲支援」のグループに僕たちの閉所式の光景が投稿されていた。
自宅に戻ったスイーツTAKUさんからも、「現在『おちょうしフォー』の、オリジナルソングを作曲中です!」と冗談とも本気ともつかない投稿が送られてきた。
すぐに美久ちゃんが「楽しみ!」と返信している。

3月20日は上戸小学校の避難所の本当の閉所式。
清恵さんから閉所式の写真が、「珠洲支援」のグループに何枚か投稿された。
僕たちと違って真面目な式の様子を見て、本当に閉所してしまうんだな、と改めて実感した。

そして今日3月21日は、医王山スポーツセンターに集団避難していた珠洲の中学生達が、約2ヶ月ぶりに珠洲に帰る日だ。
家でお昼ご飯を食べ終えると、僕とレイちゃんは車に聡と春香を乗せ、医王山スポーツセンターまで車を走らせた。

医王山スポーツセンターの駐車場に車を停める。
バスの出発までの少しの時間、はるき君、ともき君と少し話すことができた。
「色々お世話になりました」
はるき君とともき君は、僕たち夫婦にお礼を言ってくれた。
「こちらこそ、家に居る時は聡や春香と沢山遊んでくれて助かったよ。」
「ほら、聡と春香、お兄ちゃん達にお別れの挨拶をしなさい」
「今度はお兄ちゃん達、どこに行くの?」
「お兄ちゃん達は珠洲のお家に帰るんだよ」
はるき君が答えてくれた。
「珠洲のおじいちゃんの家?」
「そうだよ」
「じゃ、またすぐ会えるね」
「うん、いつでも遊びに来てね」
最後にレイちゃんに促されて、聡も春香も「さようなら」「バイバイ」とはるき君達に挨拶できた。
今回聡はしばらくお兄ちゃん達と離れていたこともあり、前回のように駄々をこねることなく、二人の旅立ちを快く見送ってくれた。

しばらく話した後、先生から集合の合図があって、はるき君達は貸し切りの大型バスに乗り込んだ。
医王山スポーツセンターの職員の方たちや支援にあたった沢山の関係者に見送られ、バスは珠洲に向かって出発していった。
去りゆくバスの中の生徒たちも、見送る僕たちも、お互いの姿が見えなくなるまで、ずっと手を降り続けた。
こうして約3ヶ月半に渡るはるき君、ともき君の金沢での避難生活は終わった。

その後家に帰って、僕は仕事を再開した。
夜レイちゃんに呼ばれて、テレビで県内ニュースを見る。
画面では中学生を乗せたバスが夕方珠洲市民図書館に到着し、解散式が報道されていた。
生徒たちは明日3月22日、それぞれの学校で開かれる終業式に出席し、新学期からは元の学校で授業を受けるということだった。
はるき君達も今頃は自宅で寛いでいるかな、と思っていると、スマホの「三月家 珠洲⇔金沢」のグループに、清恵さんから家族揃って麻婆丼と大盛りの唐揚げを食べている写真が送られてきた。

ようやく三月家に住んでいた家族6人が、自宅に揃うことができ、本当にみんな嬉しそうな写真だった。
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