第5話 1月1日。16時10分。本震。

文字数 1,430文字

「ヴゥー!ヴゥー!ヴゥー! 緊急地震速報 およそ10秒後に震度7程度の地震がきます 緊急地震速報」
またしても全員のスマホやテレビがけたたましく鳴り出した。
「マヂか!?」
思わず声が出る。
その瞬間さっきより大きな揺れが三月家を襲った。

ギシギシギシ
家の柱が悲鳴を上げる。
家が大きく右に左に揺れる。
僕は聡を、レイちゃんは春香に再び覆いかぶさる。

一瞬揺れが止まった。
1秒、いや0.1秒かもしれない。
すべての音も消えたかのような静寂を感じた気がするが、恐怖による幻覚だったかもしれない。

電気が消えた。

ゴゴゴゴゴッ
人語にし難い、地響きのような音がなり、大きな揺れが更に加速した。
「玄関だ!玄関に逃げろ!」
お義父さんが叫ぶ。
ガガガー
台所で食器棚が倒れた。
「キャー!」
清美さんの声だ。鈍い音がした。頭をぶつけたようだ。
お義母さんが清美さんに駆け寄ろうとしたが、とても立ち上がれる揺れではない。
気丈にもお義父さんが中腰で前に進み、清美さんを食器棚が倒れきる前に引き出した。

巨人が箱の中にある町の模型を、右に左に自分勝手に揺らしているような、どうしようもできないような感覚に襲われる。

ドガッシャーン
「蔵が崩れた!」
2階から降りてきた隆太さんが叫ぶ。
「蔵に近づくな!」
「玄関に行け!」
隆太さんとお義父さんがほぼ同時に叫んだ。

全員で這いつくばるように玄関に向かう。
表の道路側からも、何かが崩壊するような音が連続して聞こえてくる。
「玄関を開けろ!」
先頭の僕に隆太さんが叫ぶ。
叫ばないと周りの爆音にかき消され声が聞こえない。
揺れの中何とか靴を履き、玄関の扉を開けようとするが玄関の枠が傾いており、扉が開かない。
「玄関が傾いて開きません!」
「蹴破れ!!」
揺れは激しく、収まる気配はない。
激しく揺れる中、玄関を内側から思いっきり蹴った。
揺れで力が伝わらず、扉は外れない。
体当たりを試みる。
3回目のチャレンジで運良く玄関の扉が外れた。

そこで見た光景は表の分厚いブロック塀が、地面の根本から薄い紙っぺらのように前後にふらふらと揺らいでいる光景だった。
ガッシャーン、ガッシャーンと瓦が次々屋根から落ちて来ている。
電信柱がジュースの中の渦巻くストローのように大きく揺れている。
あまりのことにみんな一瞬呆然となる。

とても家から出られる状況でない。
「玄関も危ない!みんな靴を履いて、そのまま表の子供部屋にいけ!!」
隆太さんが一際大きな声で叫んだ。
確かに後から増築された表の部屋のほうが安全そうだ。
僕がみんなの分の靴を玄関から廊下に向かって投げて、みんなは何とか靴を履き、這いながら表の子供部屋に向かう。

台所はガラス類が散乱して通れない。
洗面台を抜けた廊下では、廊下と増築された建屋の間に10センチほどの隙間が空いていた。
僕は聡をおんぶし、レイちゃんは春香を抱っこする。
子供部屋に着く頃にはようやく少し弱まってきた。
と言っても先程の震度5強のレベルの揺れだ。

子供部屋にたどり着くと、何故か部屋の中にも一枚瓦が落ちている。
天井の一部が壊れている。
僕が率先して、子供部屋の大きな扉を開ける。
幸いスムーズに開いた。

先程紙っきれのように揺らいでいたブロック塀も、幸い崩れることなく揺れは落ち着いてきている。
その時周りから聞こえるいろんな崩壊音の中から、一際大きく、大きな塊通しが激しくぶつかる音が聞こえてきた。
「津波だ!津波が来るぞ!!、、、いや津波が来ている!!」
お義父さんが人とは思えぬような大きな声で咆哮した。
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