第47話 1月27日。休息。

文字数 1,326文字

「具合どう?おかゆ食べれそう?」
レイちゃんが僕の仕事部屋に様子を見に来てくれた。
高熱がでたので仕事部屋に布団を引き、みんなに移らないよう自主隔離中だ。
「一晩寝たらだいぶスッキリした。熱を測ってみるよ」
体温計を脇にいれる。
下着が汗で湿っており、結構汗をかいたようだ。
「37.8度。だいぶ下がったみたい」
「よかった。じゃ、おかゆと私が会社から貰ったコロナの検査キットを持ってくるわ」
「ありがとう。あとすみませんが、汗かいたので着替えお願い」
「わかった」
しばらくしてレイちゃんは、おかゆと一緒に替えの下着とパジャマを部屋の前に置いてくれた。
着替えると随分スッキリした気がする。

鼻に検査の綿棒を入れて、コロナウイルスの簡易検査を行ってからおかゆを食べた。
昨日はなかった食欲も復活して、もう大丈夫そうだ。
コロナウイルスの簡易検査の結果も陰性だった。

時計を見ると朝9時半。
所長達のライトバンは穴水あたりを走っているだろうか。
まだ倦怠感は残るが、体は楽になってきた。
今週末は所長の言うとおり、大人しく休んでいることにしよう。
スポーツドリンクを飲んでもう1度布団に入った。

11時前に目が覚めると、スマホのランプが点滅しているのが見えた。
スマホを見ると、「珠洲支援」のグループに柳さんから投稿があった。
「のと里山空港の駐車場の水洗トイレが使えました!嬉しい!!」
それは本当に嬉しい知らせだった。

元旦の震災被害の道路の分断により、一時期は500人近くが取り残され、孤立状態となった「のと里山空港」。
車両も入って行けず、滑走路も崩落し、まさに陸の孤島となった。
幸い災害支援の拠点機能がのと里山空港には備えられており、水や食料、自家発電による電気も使えた。
ただ駐車場側のトイレは以前に立ち寄った時は、非常用の簡易トイレの機能しかなかったのだ。
それが水洗トイレが使えるようになると、珠洲までの道のりが随分快適になる。

その嬉しさと同時に、七尾湾のトイレのおばあちゃんが元気で暮らしているか気になった。
七尾市の主な水道は、遠く離れた加賀の手取川から水を得ているとこの震災で初めて知った。
七尾市から手取川までは100キロ近くは離れているだろうか。
そんな長い距離の水道管の復旧作業は難航し、七尾市の水道の復旧は3月末までかかる地域もあると言われている。
あのおばあちゃん宅にも一日も早く水道が復旧していることを願った。

スマホで柳さんの投稿に、いいねマークを送った。
続けて「ご心配かけてすみません。熱は下がって随分楽になりました」とメッセージを送った。
すぐにたくさんのスタンプなどが送られて来て、道中のみんなが僕の回復を喜んでくれた。

このように距離が離れていても、すぐさま情報が共有できる時代でよかった。
もしもっと昔、例えば昭和や平成の初期に今回の震災が起こっていたらどうなっていただろうか。
今のように情報は瞬時に共有できずに、能登全体がもっと陸の孤島になっていた可能性が高い。
金沢から距離のある奥能登の情報には伝達がかかったであろう。
新聞やテレビでの報道だけでは、避難所に対してきめ細かい対応をすることは困難だ。
そこだけは若干幸いしたかもしれないな、とまだぼんやりする頭で考えを巡らせた。
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