第35話 1月13日。三度、珠洲へ。

文字数 1,375文字

平日の日中は、僕とレイちゃんは主にリモートで仕事。
聡と春香は保育園。
はるき君、ともき君は勉強や運動。
時折気分転換に図書館で勉強している。
清恵さんには聡、春香の保育園への送り迎えや、買い物やご飯の準備など家事全般をお願いした。
子供たちは多くの人と暮らせて楽しそうだ。
そして夜はみんなで週末の避難所の支援に向けた準備と慌ただしく過ごした。

13日土曜日の早朝4時半、僕と清恵さんは所長に借りたライトバンで家を出発した。
今回ははるき君、ともき君は金沢で留守番だ。
ライトバンで今回一緒に支援に行ってくれる、僕や所長の友人たちを迎えに回った。

1人目は心優しいマッサージ師の柳君。
2人目は調理師免許を持ちアジアン料理店を営む、福森さん。
3人目は同じ設計事務所の後輩で、華道も見習中の美久ちゃん。
そして最後4人目は、年上の友人でギターの名手、スイートTAKUさん。

色々な経歴のメンバーをライトバンに載せて、金沢を出発した。
前回同様ライトバンは支援物資でパンパンとなった。
後部座席の足元にもぎっしり支援物資や、自分たちの身の回りの荷物を押し込んだ。

道中、ほとんどの人が初対面で、専門分野も畑違いのみんなだが、今から被災地に支援に行くという高揚感からか話が盛り上がり楽しい会話が弾む。
僕と清恵さん以外は震災後、初めての能登に入ることになる。

6日と同様、志雄パーキングで最後の普通に使える水洗トイレで用を足す。
のと里山海道の徳田大津インターチェンジの前では、今回も滋賀県警の人たちが車を停めて、1台1台運転手対して話しかけている。
前回と同様に珠洲の実家と避難所に支援物資を届ける旨を伝えて、無事通ることができた。

七尾湾の国道に合流し、トイレのおばあちゃん宅の前にはおにぎりをはじめ、福森さんが作ってくれた手料理も交えて紙袋に入れて置いていった。

七尾市と穴水町の境目辺りから倒壊した家屋が増え始める。
僕もそうだったが、初めてその光景を自分の目で見るとショックが大きい。
テレビの中での報道では、どこか現実離れした感じがあるが、実際に目のあたりにすると大きな被害である現実を突きつけられる。

皆さんを迎えに行った関係で、出発が前回よりも少し出遅れ、珠洲までスムーズに行けるか心配だったが、6日と同様、金沢を出てほぼ6時間の11時過ぎに珠洲に着くことができた。

先ずは三月家に車を停めて、それぞれの身の回りの荷物を降ろした。
この2日間の生活の拠点として三月家を使わせて貰うことなっている。
はるき君の部屋を美久ちゃん。
ともき君の部屋を柳さん、福森さん、スイートTAKUさん。
僕や清恵さんや三月家の面々は母屋の方で泊まることとなっている。
外は雪がちらつく天気だが、電気が通った家の中は先週と比べて格段に暖かい。

珠洲は前日12日は10度近くまで気温が上がったが、日付が変わってからどんどん気温が下がり、日中は1度に満たない極寒の一日だ。
家は応急措置の修復もそこそこうまくいっているようで、屋根や外壁から入る冷気は最小限に止められている。
床下の隙間からの底冷えはあるが、分厚い靴下の下にスリッパを履いてやり過ごしているとのことだった。

お義父さんやお義母さん、隆太さんも変わりなく、元気そうで何よりだった。
お昼にレイちゃんが作ってくれたおにぎりを食べて、一息ついてからみんなで避難所に向かった。
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