第34話 1月9日。前進。

文字数 875文字

「隆太さんからLINE来て、避難所に電気復旧したんやって」
「本当ですか、それはよかった!」
みんなで朝食を食べている時、清恵さんが教えてくれた。

電気があればスマホも充電できるし、テレビでニュースも見ることができる。
そして何より夜のあの漆黒の暗闇からも開放される。
飛躍的に生活が改善されることだろう。

「これから家に行って、家でも電気が点くか確認してみるって」
「電気復旧しているとよいですね。それにしてもあれだけ電柱が倒れていたのに、よくこんなに早く復旧しましたね」
「全国からいろんな電力会社の人たち来てくれて、復旧してくれたって」
「素晴らしいですね」
「本当に」

朝食後、僕は家でリモートで設計の仕事を始めた。
レイちゃんも当面はリモート勤務に切り替えている。

10時の休憩でキッチンでコーヒーを飲んでいると、清恵さんがLINEで電気が灯った三月家の写真を見せてくれた。
「おっ、復旧しましたね。本当によかった」
「ファンヒーターも使えて、家の中も暖かいって」
「珠洲の今日の予想最高気温5度って言ってましたし、それはありがたいですね」

元々珠洲は都市ガスではなく、各家庭に設置されているのはプロパンガスだ。
そのためガスはボンベに残っていれば使える。
ガスと電気が使えれば残りは水道だ。
だが浄水場自体に大きな被害が受けた。
報道では水道の復旧は3月末を目指すと言っているが、見通しは全く経っていないらしい。

でも電気だけでも復旧できたことは、現地に住んでいる人には大きなニュースだろう。
「昨日避難所で電気が点いたとき、歓声と拍手があがったって」
電気が使えればできることの選択肢が格段に増える。

僕たちの支援も電気が使えることをベースに色々考えてみることにした。

***
大きな余震は殆どなくなってきたが、9日の18時頃、新潟で震度5弱の地震があり、金沢でも少し揺れを感じた。
テレビでは今回の能登半島地震での「割れ残り」が新潟方面の海底の岩盤にありそうで、その割れ残りが再び大きな地震や津波に繋がる可能性を示唆していた。
これ以上大きな地震が日本で起きないことを願うばかりの夜となった。
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