第6話 湖に着いた。
文字数 1,982文字
それぞれを地水火風の化身たちがひとつずつ受け持っていて、各々の特性に合わせた発展をしている。
たとえば、今いる水の大陸は四大陸で一番小さい。
だが水の化身が住まうこの地は、水源が多く有数の川や湖を持ち、多様な水生生物が存在する。
海流も穏やかで、大きな港をいくつももち、他の地の国に比べ、水産業が豊かで盛んだ。
目の前に広がるアルケー湖もその一つ。水の大陸一大きな湖だ。
もちろん、人々もたくさん集まるし、露店や屋台、見世物小屋やエッチなお店まで雑然と広がり賑わっている。
近づけば近づくほど、人々の熱気と賑わいにあてられ、どうにか一夜をしのいだ私も大興奮!…とはいかなかった。
確かに、沢山人もいるしお店もある。それはいい。
水の大陸らしく青系統の、のれんや、のぼりが多々並ぶのも統一感があって素敵だ。
だが、そこに書かれている文字はどうだろう?
神殺し饅頭・神殺しの魚焼き・神殺しのかき氷・神殺し研磨店…果ては、必殺神殺しの店
などという如何わしいお店まで「神殺し」である。
情報収集や、疲れた体の休息をという名目で、ひとまずアルケー湖に足を運んだらこれである。
私の当初の目的…甘くてもちもちのお菓子を食べつつ、時間稼ぎをするつもりだったのに…
水中に眠る伝説。という名のお店を指さすタチ。
白いお酒の中に、赤い縦長の木の実が一つはいっている飲み物のようだ。
お店にでかでかと貼り出されている商品図解の横、湖の底に剣が突き刺さっている絵が描かれている。
今回、とことんついてない気がする…無能力無才能で生まれたことから始まり、私を殺したい人間と出会って、その手助けをする形になるとは。
なぜ…どうして…。
全身を覆い隠した服装の子供?が深くかぶった頭巾から私たちを見て大声を出す。
暖かなこの時期に、不自然な恰好…見るからに怪しい。
ちびっこはズイズイ歩いて寄ってくる。手には串にささった透明の丸が六つ連なる食べ物を持って…。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk/ecf36a6cd1b5eddde3398be66e055420.jpg)
そして、なにより。
あのもちもちはきっと私が食べたかったお菓子に違いない…!
タチの前にでで~んと立ち止まったちびっこ、頭巾の下に隠れていた水色の顔がチラリと見える。
そう、水の化身ズーミだ。 なるほど、だから肌を隠していたのか…。
私はズーミの持つお菓子に興味をもち、タチはズーミの服装に興味をもったようだ。殺されかけた相手より。
だめかもしれない私たち二人は。
それはとても残念な気持ちになるので、まずは神としてしかるべき質問をする。
もちもちをどこで買ったのかは後で聞こう。
なにせ賑わう場所だ、あちらこちらで声があがる。浮かれた若者たちのじゃれ合いに、しつこい客引き、楽しそうな親子の笑い声…
そんな中とあれば、神様と人間に責められる化身だって埋もれていくのである。