ヘイデルへ続く道
文字数 1,021文字
小さな町と大きな街を繋ぐ道は、始めは地面を踏み固めただけのものであった。しかし、彼らが進むにつれ、その道は石畳の立派なものへ変わっていく。道幅が、二人が横に並んで歩ける程に広くなった頃、ザウバーは後方を振り返り、目指す場所が近いことを少年に伝える。
青年の話を聞いたダームは、目的地がどこに有るのか確かめようと、背伸びをして辺りを見回す。それを見たザウバーは、腕を上方へ向けて伸ばした。彼は、前方に有る街を見据えており、その指先は高位に有る十字架を指し示している。
「上の方に見える十字架が目印だ。ヘイデルの教会は、やたらとでかいからな」
説明を聞いたダームは何度か頷き、驚いた様に声を漏らす。少年の瞳は楽しそうに輝いており、彼が目の前にある街に興味を持っていることが窺えた。
その後も、ザウバーは何も知らない様子の少年へ、街の説明を加えていった。
「凄く詳しいんだね。ザウバーは、ヘイデルに行った事が有るの?」
「子供の頃にな」
「そっか……僕なんか、一度も村から出た事が無いや」
ダームは空を仰ぎ見ながら、大きな溜め息を吐いた。
「無理もねえ。お前が居た村の辺りは、交通機関が発達してないからな」
そう言うと、ザウバーは少年の肩を何度か叩く。肩を叩かれた少年は、目を細めてザウバーの顔を見上げ、彼に言葉を返そうと口を開いた。
しかし、ダームが言葉を発することの出来る前に、彼らの前方から地面を揺らす程の大きな爆発音が聞こえてくる。今までに聞いたことの無い轟音を耳にしたダームは、驚きの為に目を丸くし、言葉を失ってしまった。
「今の音……ヘイデルの方角からだ」
ザウバーは、重々しい口調で少年へ伝え、前方を見据える。ダームと言えば、村の惨状を思い出してしまったのか、その場に立ち竦み、大きく震え始めた。
また、彼の顔色は蒼白で、今にも倒れてしまいそうな程である。
「ここで考えていても始まらねえ。ヘイデルに急ぐぞ!」
そう叫ぶと、ザウバーはダームの状態を気に止める事無く、爆発音のした方へ向かって走り始める。一方、いきなりの出来事に混乱してしまったダームは、暫くの間ザウバーの背中を見つめたまま立ち尽くしていた。
それでも、少年は頭を横に振ると、意を決した様にザウバーを追い掛けていく。