穢れなき衣装
文字数 1,368文字
少年が部屋を見回していくと、純白のローブを纏ったべネットが窓際に居た。彼女のローブは陽光によって微かに輝き、その袖や襟刳りには金糸による刺繍が施されている。
「ベネットさん、その格好」
ダームは、驚いた様子で言葉を漏らした。
「この服は、OTΟに属する者の正装だ」
質問を受けたベネットは、そう返すとダームの方を振り返る。彼女の表情は凛としており、きちんと纏められた髪がそれを強調していた。
「昨日説明した通り、上手く立ち回るにはΟTΟの権限が必要だ」
「そうだったね。でも、余りにも神々しい服だったから驚いちゃったよ」
少年は、そう言うと顔を赤らめ、恥ずかしそうに微笑んだ。
「そうだ、お腹は空いていないか? まだザウバーは起きていないが、料理を頼んでから届く迄に時間が掛かる。早めに頼んでおいても、問題は無いだろう」
そう言うと、ベネットは頭を軽く傾けた。少年を見つめる彼女の表情は柔らかく、それを見たダームは小さく頷く。
「そうだね。ザウバーは、料理が届いた時に起きてなかったら起こせば良いし」
質問に答えると、ダームは嬉しそうに笑い始めた。
「それならば、直ぐに注文をするとしよう」
そう返すとべネットは立ち上がり、フロントへ連絡をする。
それから暫く、ダームとベネットは他愛もない話で盛り上がっていた。そして、その話題が青年を起こすか否かに変わった時、客室のドアを叩く音が響く。
にぶい音を聞いたダームは、はっきりとした声で返事をして客室のドアを開けた。この時、ドアの先には、従業員が料理を乗せたワゴンと共にあった。
「お待たせ致しました。朝食をお持ちしましたので、失礼致します」
そう言うと、制服に身を包んだ従業員は深々と頭を下げる。その後、彼はゆっくり頭を上げると、ワゴンを押しながら客室へ入った。
程無くして、全ての料理を並べ終えた従業員は客室を去った。従業員が部屋から居なくなった後、ダームは部屋の鍵を内側から掛ける。
「料理が届いたのだし、ザウバーを起こして朝食にしよう」
ベネットは、立ち上がってザウバーが寝ているベッドへ向かった。それから、彼女は青年の体を揺すって起こすと、食事が届いたことを彼に伝える。
青年が目覚め、ダームはいそいそと食卓につく。その後、三人は静かに食事を始め、用意された料理は段々と無くなっていった。
料理が届いてから数十分が経った頃、全員が食事を終えた。この時、腹を満たした青年は、直ぐに学園へ向かいたいと言わんばかりに立ち上がる。
「食うもん食ったし、そろそろ出発するか」
彼の表情は、良く眠れたことを示すかの様に力強く、顔色も良い。一方で、彼の髪は乱れており、それがザウバーの性格を表している様でもあった。
「そうだな。始業の鐘が鳴ってからでは、儀式を見ようと集まってきた者が増える。早めに学園へ向かって、人が増える前にゆっくり中を調査しよう」
「そうだね。折角の貴重な機会なんだから、沢山調べないと」
ダームは、そう返してから立ち上がる。
「では、早速出発するとしよう」
ベネットの言葉を合図に、三人は素早く身支度を済ませ、学園を目指して出発した。