ノイキュステ
文字数 1,349文字
その後、彼らが踏み固められた小道を進んでいくと、大小様々な建物が並ぶ街に到着する。街には既に明かりが灯り始めており、街の入口が見えるや否や、ダームはそこへ向かって走り始めた。少年は速度を落とすことなく進んでいき、街に入るなり嬉しそうに声を上げる。
「本当、あいつは元気だけが取り柄だな」
その光景を後方から見ていたザウバーは、微かに笑いながら声を漏らした。彼の目元には隈が浮かんでおり、かなり疲れていることが簡単に見て取れた。
「いいじゃないか。多少やり過ぎる部分が有ったとしても、それはそれで個性だと思うぞ」
青年の呟きを聞いたベネットは、そう返すと彼の方を向いて微笑む。
「だな。あいつの無駄な元気は、周りに力を与えている様な気もするもんな」
そう言うと、ザウバーはベネットに対して微笑み返した。この時、ダームは中々追いついて来ない仲間の方を振り返り声をあげた。
「二人とも、何を話しているの? 暗くなり始めてきたし、泊まる場所を見つけて休もうよ」
「そうだな。宿を探して、休むとしよう」
そう返すと、ベネットは青年と顔を見合わせる。
「直ぐに追い付いてやるから、そこで待ってやがれ!」
ザウバーは、そう言うと少年の方に向かって走り始めた。
それから、彼らは大きな道を選んで進んでいき、十数分経ったところで小さな宿を見つける。その宿自体は古いものの掃除は行き届いており、周囲に清浄な空気が流れている様でさえあった。
また、宿の南側に在る庭には様々な草花が植えられており、その手入れの良さから従業員の性格が窺えた。そして、いち早く宿の存在に気付いたザウバーは、その建物を指し示す。
「この旅館なんてのはどうだ? それなりに綺麗だし、そんなに宿泊料が高くなさそうだ」
「そうだな。今日は慣れない移動をした。休める場が見つかったなら、早く休んだ方が良いだろう」
提案を聞いたベネットは、そう言うと青年の顔を見る。一方、ダームはザウバーの顔を見上げ、意見を受け入れる様に大きく頷いた。
「じゃあ、決まりだな」
二人から肯定の返事を得たザウバーは、いそいそと旅館の入口へ向かった。
そうして一晩休んだ後、三人は元気そうに宿を出る。
「先ずは、聖霊の情報を集めるとしよう」
「だな。ファンゼの言う通りにここ迄来たが、正確な場所は分かんねえもんな」
そう返すと、ザウバーは気怠るそうに溜め息を吐いた。
「しかし、何も手掛かりが無いよりは良いだろう。世界は狭く無いからな」
ベネットは、青年の目をしっかり見つめ、諭す様に言葉を紡いだ。
「まあな。それに、ファンゼは俺達が知らない情報もくれたしな。随分と旅も楽になるだろうよ」
「聖霊の相性や、複数の聖霊の力による新たな力……ファンゼは、ユニコーンについて述べてはいたが、他にも新たな力が有る事も示唆していた」
そう言葉を加えると、べネットは大きく深呼吸をする。
「だな。その力を得る為にも、さっさと情報を集めようぜ」
ザウバーは、そう言うと胸の前で拳を叩き合わせ、いつ終わるとも分からない聞き込みの為に気合いを入れた。