美味しい手頃なランチを探せ
文字数 1,258文字
「いい加減、詩を探して廻るのも疲れたな」
彼の額にはうっすらと汗が浮かび、発せられた声は掠れている。
「そうだね。それに、フォッジには石碑やプレートに刻まれた詩が沢山有るけど、聖霊に関係していそうな詩は余り見つからないし」
ダームはザウバーと同様に木陰へ移動し、力無くその場に座り込んだ。その際、腰に携えた剣の鞘が木にぶつかるが、少年がそれを気をとめる事は無かった。
仲間の行動を見ていたベネットは、二人の居る木陰へゆっくり近付いていく。
「では、そろそろ昼食も兼ねて、何処かで一休みするとしよう」
「だな。今日は早くに出発したし、ダームに至っては、昨日から何も食ってねえもんな」
青年は目を輝かせながら言うと、笑みを浮かべてダームの背中を軽く叩いた。
「そうだよ……もう僕、お腹が空き過ぎて倒れそうだもん」
ダームは力無く目を伏せ、大きな溜め息を吐く。そして、ダームは空腹である事を強調するかの様に、その腹を数回さすった。
「朝飯を食いたかったなら、早く起きろよ」
呟くように言うと、ザウバーは大きな溜め息を吐いた。
「これだけ広い街なのだ。食事の出来る店は、探せば直ぐに見つかるだろう。話し込むのは、其処でゆっくりとすれば良い」
ベネットは、話を収束させる為に言い、周辺を見回した。そして、彼女は比較的人通りの多い道を見ると、二人に目配せをしてその道へ歩みを進める。
食事処を探し始めてから暫くして、ザウバーは料理の匂いを頼りに飲食店が立ち並ぶ街道を見つけた。
「ここ一帯には、食堂が沢山有るみてえだな」
すると、今までうなだれていたダームが、元気良く頭を上下に動かした。
「そうだな。これ程に店が在るのならば、名物料理を扱っている店が在るかどうか探してみないか?」
「で、フォッジの名物料理って何が有るんだ?」
「私も詳しくないのだが、名物料理を販売している店には看板位建っているだろう。それを手掛かりに探せば、見つからない事は無いだろう」
「それもそうだな。名物料理って言うからには、店側も宣伝してえだろうし」
ベネットの意見を受け入れると、ザウバーは様々な店の看板を見ながら歩き始めた。
名物料理を探し始めてから暫くした後、少年がコルクボードに貼られたメニュー表に気付く。ダームは、その内容を一読してから、嬉しそうにザウバーの背中を数回叩いた。
「この店はどうかな? 今の時間帯なら、ランチタイムだからデザートも付いて来るよ」
嬉しそうなダームの呼び掛けに気付いたザウバーは、少年の肩に腕を回して、その体に寄りかかる。そして、彼はその姿勢のまま、メニュー表に目を通していった。
「いいんじゃねえか、値段も手頃だしよ」
「では、決まりだな。この店に入って一休みしよう」
ベネットはダームが指し示した店の戸を、ゆっくり開く。すると、その振動によって、店の戸に付けられた鐘が高い音を発した。