分かち合う楽しみと調査報告
文字数 1,570文字
それを聞いたダームは、直ぐに窓の方へ駆け寄り、外の光景を眺めた。
「本当だ。街に沢山の光があって、すっごく綺麗!」
窓越しに外の光景を見たダームは、楽しそうに目を輝かせてザウバーの顔を見上げた。
「その分、値段は張るだろうがな」
ザウバーは、ダームの顔を見つめ苦笑する。彼の言葉を聞いたダームは、複雑な表情を浮かべ俯いてしまった。
「だから……俺達だけで堪能するのは、勿体無いと思わないか?」
そう言葉を加えると、ザウバーはダームの肩を軽く叩く。
「そうだね……僕、ベネットさんを呼んでくるよ。大学で調べてきてくれた事も聞きたいし」
ダームは、そう言うと返事を待つ事無く、ベネットが居る部屋へ向かって走り始めた。
暫くして戻ったダームは、客室のドアを勢い良く開け、嬉しそうに口を開く。
「ベネットさんを呼んで来たよ」
元気なダームとは対照的に、べネットは物音一つ立てる事無く部屋へ入った。また、小走りで入室した少年は直ぐに窓の方へ向かい、笑顔を浮かべて後方を振り返る。
その後、ダームはベネットを窓の方へ誘い、窓を全開にして右腕を大きく外へ伸ばした。
「ね! 凄い綺麗でしょ?」
彼の嬉しそうな表情を見たベネットは、窓から上半身だけを出して数多の星が輝く夜空を仰ぎ見た。ベネットは、暫く夜空を眺めた後でダームの顔を見つめ、微笑みながら小さく頷いた。
「そろそろ満足か? いい加減、本題に入るぞ」
ザウバーは、真剣な面持ちで言い放つと、ダームの居る方へ目線を動かす。
「本題?」
ダームは、まるで意味が判らないといった様子で声を漏らし、ザウバーの顔を見てから首を傾げた。
「大学で調べた事を報告して、その情報を元に次に何をすべきかを話し合うんだよ。折角、二手に別れて調べたんだ。その内容を共有しなけりゃ、勿体無いだろ」
溜め息混じりに答えを返すと、ザウバーは部屋の中程に置かれた肘掛け椅子へ腰を下ろした。
「そうだな。私と別れた後、ザウバーが何を調べてどの様な情報を得たか。それは、今の私には分からない」
ベネットは開いている窓をゆっくり閉め、ザウバーに近付いていく。
「そっか、別れて調べてたんだね」
ダームは窓際を離れ、ザウバーと向かい合う形でベッドの縁に腰をおろした。また、ザウバーは全員が腰を下ろした数秒後に、図書館で得た情報を二人に伝え始める。
その後もザウバーとベネットは話を続けていき、二人は日付が変わる頃にようやく調べてきた話を終えた。
その一方、話を聞いているだけのダームは、上体を不規則に揺らしていた。その上、ダームの目は閉じている時間の方が多くなっており、彼が眠りに落ちるのは時間の問題だった。
「今日はもう遅い。折角宿を取ったのだから、休むとしよう」
ダームの様子を見たベネットは、眠そうな顔を見つめて微笑んだ。すると、ダームは小さく頷き、今まで腰を下ろしていたベッドへ力無く倒れ込む。
「やはり、限界だった様だな」
ベネットは掛け布団の上で寝てしまったダームをベッドの端へ寄せる。それから、下敷きになっていた布団をダームの下から引っ張り出し、彼の体に掛け直した。
「強がっちゃいるけど、本当は年端もいかない子供なんだよな」
ザウバーは、ダームを起こさないよう小さな声で話した。ベネットは、ザウバーの意見に対して頷くと、彼と目を合わせる事無くドアの方へ向かっていく。
「私も、部屋に戻って休もうと思う。ダームは寝てしまったのだし、疲れているのなら無理せず休む方が良い」
ベネットは、ザウバーの返事を待つこと無く部屋から立ち去った。この為、話し相手が居なくなったザウバーは、寂しそうに天井を仰ぎ大きな溜め息を吐く。
それから、彼は勢い良くベッドに寝転がり、そのままゆっくりと目を閉じた。