子供二人と見守る者達
文字数 1,291文字
「ベネットは?」
ルピスは、つまらなそうに目を細めると、そのままザウバーの顔を見た。そんな彼の尾は下がり、不機嫌そうに揺れている。
「ベネットか。そういや、俺が起きた時には居なかったな」
残念そうな声を聞いたザウバーは、気怠そうに大きな伸びをした。
「村長と調理場でご飯作ったから、みんな揃ったら食べていって。口に合うかどうか分かんないけど」
それだけ言うと、ルピスは大きな溜め息を吐きながら腰を下ろす。
「僕、ベネットさんを捜して来るよ。折角作ってくれたのに、御飯が冷めたら申し訳無いもの」
ダームは、そう告げると元気良く立ち上がり、小走りで戸の方へ向かっていった。ところが、彼が部屋を出る直前に、ベネットは申し訳無さそうな表情を浮かべて戻ってくる。
この時、ベネットが戻ってきたことに気付いたルピスは、嬉しそうに彼女へ近付いていった。
「ベネット! あのね、あのね、御飯作ったから食べてね。村長と作ったから美味しいよ!」
自慢げに話すと、ルピスは目を輝かせベネットの顔を見上げる。
「有難う。お腹が空いたので助かる」
「良かった。じゃあ、案内するからついて来てね!」
ルピスは、そう話すと三人を先導する様に歩き始める。
ルピスは、中央に木製の机がある部屋の前で立ち止まると、ゆっくり後方を振り返る。机に並べられた料理を前にしたルピスは、両腕を広げた。
「どう? 旬の山菜とか、朝に捕った川魚の塩焼きとか、新鮮な料理」
ルピスの説明を聞いたダームは身を乗り出し、料理を眺める。
「本当だ。すっごく、美味しそう!」
ダームは、嬉しそうに言葉を発し、ルピスの目を見て頬を綻ばせた。
「沢山用意したから、遠慮しないで食べて」
ルピスは、待ちきれないといった様子で声をあげると、両腕を広げて上下に振る。そんなルピスの言葉を聞いたダームと言えば、一番手近に有った川魚の丸焼きへ手を伸ばしてかぶりついた。
「美味しい。僕、今まで魚よりお肉が好きだったけど、こんなに美味しいなら魚派になるかも」
魚を頬張ったダームは、そのあまりの美味しさに目を丸くし感嘆の声を漏らした。
「でしょ、でしょ。料理したのは村長だけど、捕まえたのはオイラなんだよ凄いでしょ!」
ダームの誉め言葉を聞いたルピスは、自慢気に胸を張った。
「あの二人、なんか似てねえか? 単純と云うか、素直っつうか」
少年達のやり取りを見ていたザウバーは、二人には聞こえない声でベネットに耳打ちをする。
「ああ。まるで、双子の兄弟を」
「ベネット! おっさんなんかと話してないで、早く来て来て!」
ルピスは、二人の会話を遮るように叫び声をあげた。ベネットは、声に反応してルピスを見ると、目を細めて笑みを浮かべる。
「分かった、直ぐに行く」
そう言うと、ベネットは手招きをしているルピスの方に向かっていく。一方、その光景を見ていたザウバーは、呆れた様子で溜め息を呟いた。