オレのつぶやき5
文字数 579文字
この頃はまだ星壱は武に反発はしていたものの、嫌ってはいなかった。恐らく尊敬すらしていただろう。それが一変したのは、親父の体調が著しく悪化してからだった。
星壱はいつか自分が『星龍会』を継ぐものと信じていたに違いない。武は確かに親父のお気に入りだ。親父は自分の子供、いやそれ以上に愛情を注いでいるように見えた。それでもだ。それでも最後は血の繋がった自分が後を継ぐ。星壱はそう信じていたのだろう。
だが実際は違っていた。床に伏した親父は武を跡継ぎにするとはっきりと口にしたのだ。
それは武にとっても意外なことだったのではないだろうか。他でもない武自身も星壱が後を継ぐべきだと考えていたようだ。
思いがけないチャンスが転がってきたと思ったのではないか。これまで抑え込んでいた欲望の鎌首が擡(もた)げてきたのだろう。
それが目に見えるようになってくると、星壱との仲は完全に拗(こじ)れていった。元子は窘(たしな)めるが、武は聞く耳を持たなかった。元子はそんな時でもそれ以上は何も言わずに、黙って夫に従った。
武はのちに後悔したことだろう。彼は今後いくらでも反省するための時間を手に入れる。無限とも思える長い時間。しかしそれはまだまだ先の話なので、一先ず横に置いておこう。
武と星壱は袂を分かつことになる。歯車はすでに狂い始めていた。
星壱はいつか自分が『星龍会』を継ぐものと信じていたに違いない。武は確かに親父のお気に入りだ。親父は自分の子供、いやそれ以上に愛情を注いでいるように見えた。それでもだ。それでも最後は血の繋がった自分が後を継ぐ。星壱はそう信じていたのだろう。
だが実際は違っていた。床に伏した親父は武を跡継ぎにするとはっきりと口にしたのだ。
それは武にとっても意外なことだったのではないだろうか。他でもない武自身も星壱が後を継ぐべきだと考えていたようだ。
思いがけないチャンスが転がってきたと思ったのではないか。これまで抑え込んでいた欲望の鎌首が擡(もた)げてきたのだろう。
それが目に見えるようになってくると、星壱との仲は完全に拗(こじ)れていった。元子は窘(たしな)めるが、武は聞く耳を持たなかった。元子はそんな時でもそれ以上は何も言わずに、黙って夫に従った。
武はのちに後悔したことだろう。彼は今後いくらでも反省するための時間を手に入れる。無限とも思える長い時間。しかしそれはまだまだ先の話なので、一先ず横に置いておこう。
武と星壱は袂を分かつことになる。歯車はすでに狂い始めていた。