武のつぶやき6

文字数 401文字

 星次は解っていたのかもしれない。このままでは『星龍会』は崩壊すると。
 気がつくといつのまにか星次も大人になっていた。俺や星壱の後ろに隠れていた子供だったのに、自ら考えて行動できるようになった。喜ばしいことではあるが、同時に寂しくもあった。
星次の背中を見送りながら言いようのない不安を感じた。皆俺の元を離れて行ってしまうのではないか、と。星壱も昔は俺なしでは何もできない雛子(ひよっこ)だった。あいつの尻拭いをしたことも一度や二度ではない。それがどうだ。俺に逆らうようになり、おまけに俺の上に立つことを望んでいる。親父の考えにも逆らうようになった。俺自身も引くことを知らない性格だったことが、関係悪化に拍車をかけた。どちらかが僅かでも引くことを覚えていたら、この後起こる不幸は防げたかもしれない。
 この時俺は引き返す最後の機会を失った。星次の悲しそうな顔が昨日のことのように思い出せる。
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