○九九七年、五月一〇日(一五年前) 5

文字数 1,143文字

「騒ぐなよ」
 突然インターホンが鳴った。しばらく扉の前にいたようだが、去っていった。邪魔はされたくない。この女に俺という存在を刻み込むために。
 白いブラウスを一枚だけ着て、下には下着しか着ていない理亜の姿は星壱を興奮させた。
「やめて……」
「やめてじゃねえよ」
 星壱はナイフをベッドの脇に突き刺した。
「お前は会長に戻れると言ったじゃねえか。それがどうだ。武は出て行ったが俺も戻れなかった。どういうことだ!」
 理亜はだんだんイライラしてきた。なんでこんな奴に脅かされなくてはならないのか。理亜は感情のスイッチを切った。
「本気で戻れると思っていたの?馬鹿な男」
「なに!!」
「何をしに来たの?文句を言いに来たわけ?」
「お前に俺という存在を刻みに来たんだ。俺の女になれ!!」
「ふん」
 理亜は鼻で笑った。星壱の額に青筋が走る。
「何であたしがあなたなんかの女にならなきゃいけないの」
「お前!!」
「いいわ。一回やらせてあげる。それで満足できないというなら、勝手にしなさい。でもあたしの心は支配できない。いつでも死んでやるわよ」
 そう言って理亜は舌を噛む仕草をした。星壱は理亜が本気だと感じた。
「うわああああああ」
 星壱はブラウスを引きちぎった。ボタンがいくつか飛び散った。形の良い胸が露わになる。星壱は貪るように乳首を舐めた。興奮している星壱のよだれが理亜の胸にへばりつく。しかし理亜は何も感じない。
 星壱は理亜の下着の紐を外し、簡単に理亜の下着を脱がした。慌てて星壱もベルトを外し、ズボンとパンツを一緒に脱いだ。乱暴に理亜の股を広げ、星壱のものをその間に捻じ込んだ。
「はあ、はあ、はあ」
 星壱の吐息が漏れる。
――やった。やっとこの女を陵辱してやった。これでこの女は俺のものだ。
「はあ、はあ、はあ」
 不意に理亜と目が合った。いや、合ったように見えた。無表情の理亜は何も感じてはいなかった。快感も痛みも怒りも恥辱も何も感じてはいなかった。それどころか星壱を見てもいなかった。理亜の視線は虚空を彷徨っていた。
「何で……、何で俺を見ない!」
 星壱は理亜の頬を力一杯引っ叩いた。頬は赤くなったが理亜の表情は動かなかった。
「やめろ。その目をやめろ」
 理亜の目は何も見ていない。星壱は頭を掻き毟った。視界が激しく歪む。
 瞳からは涙が、鼻からは鼻水が、口からはよだれが、下からは精液が、星壱はすべてを垂れ流していた。朦朧とする意識の中で星壱は声を聞いた。
 
――初潮も来てるか解らないようなガキを……。
――糞が!
 
「そう。俺が糞だ……」
 気がつくと星壱はいなくなっていた。
 
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